gross negligence(重過失)とは何か?~結果の重大性との関係~

      2019/11/18

売買契約や請負契約には、以下のような条文が定められることがよくあります。

 

Notwithstanding anything to the contrary stated in this Contract, the Supplier’s liability to the Purchaser under this Contract shall be limited to an amount equal to one hundred (100%) percent of the Contract Price; provided, however, that such limitation of liability shall not apply to any loss or damage arising out of or connected with the Supplier’s gross negligence, fraud, or willful misconduct.

「本契約に反対のことが定められている場合でも、それにも関わらず、売主の買主に対する本契約に基づく責任は、契約金額100%に制限される。ただし、かかる責任制限は、売主の重過失、詐欺、または故意から生じる、またはそれらに関する損失・損害には適用されない。」

 

つまり、原則として、売主の責任は契約金額を上限とするが、売主の故意・詐欺・重過失の場合には、そのような上限は適用されず、売主は、買主に生じた損害を全て賠償しなければならない、ということです。



 

ここで、故意はわざと、詐欺は騙すこと、とわかりますが、重過失とは何なのか?というのはよく問題になる点です。

 

というのも、ただの過失というものがあり、それと重過失の区別がよくわからないからです。

 

この点、日本の法律でも、重過失という文言が定められていることがときどきありますが、その内容までは定められていません。

 

一般には、「故意に匹敵するような注意義務違反」とか、「わずかの注意を払えば回避できたのに、そのような注意すら怠った場合」といわれたりしています。

 

では、海外ではどうなのか。

 

例えば、米国のカリフォルニア州法の下でのgross negligenceは、次のように解釈されています。

 

want of even scant care or extreme departure from the ordinary standard of conduct

 

want of even scant care

わずかの注意すら欠いたこと」

※wantは名詞で「欠如」「足りないこと」という意味があります。

 

extreme departure from the ordinary standard of conduct

「通常レベルの行動規範からの著しい乖離

 

上記から、日本で考えられている重過失とそう変わりないものであると想像されます。

 

では、「些細な注意」とは、何か、scant careとは何か、extreme departureとは何か。

 

これは、問題となっている案件ごとに異なり、一義的にはいえません

 

ただ、ここで1つ重要となるのは、gross negligenceとは、基本的に、「結果の重大性」とは直接の関係はない、ということです。

 

凄まじい大損害が生じたからといって、そのことが直ちにgross negligenceであると判断されることになるわけではないのです。

 

この点、「とんでもない大損害」が生じる結果になることが予想されるような場面で契約当事者に期待される注意義務の程度が、通常の場合よりも高度なものとなり、その結果、gross negligenceと認定されやすくなる、という影響はあるかもしれません。

例えば、せいぜい生じても100万円程度の損害しかし生じないだろうと思われているような場合に契約当事者に期待される注意義務の程度をAとすれば、100億円の損害が生じると予想される場合に期待される注意義務の程度はBで、AとBの関係は、B>Aということはあるかもしれません。

 

しかし、それは、契約当事者が負うべき注意義務の程度に違いを生じさせることがあるというだけで、「莫大な損害が生じたからgross negligenceとなる」と直ちにいうことではないのです。

 

ときどき、買主側から、「こんな莫大な損害を生じさせたのだから、これは売主の重過失に違いない!」といわれることもあるかもしれません。

 

そういわれると、売主としては、「確かに・・・」と思ってしまうかもしれません。

 

しかし、「結果の重大性」と「重過失やgross negligenceとなるかどうか」は、直接関係するものとはいえないのです。

 

買主としては、責任制限条項があるため、上記の様に主張して、なんとかこの条文の適用を排除しようとしてくるかもしれませんが、そのようなときは、この記事を思い出して、冷静に対処していただければと思います。

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