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本郷塾で学ぶ英文契約

英文契約でreasonable effortとbest effortの違い

2024/01/13
 

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英文契約基礎から実践講座

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英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
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英文契約書を読んでいると、ときどき登場する努力義務ですが、reasonable effortとbest effortの間に違いはあるのでしょうか?

 

つまり、例えば契約書上で、自分たちの企業が何らかの努力義務として、best effortでそれをしなければならない、と定められている場合に、あえて、reasonable effortと修正する必要があるのでしょうか。

 

この点、世界において、その判断は一律に決まってはいないようです。

 

「差はある」とする英国の裁判での判断では、両者を次にように区別しています。

 

まず、best effortは、考えられる「合理的なあらゆる手段」を用いなければならない、という意味と捉えています。

 

一方、reasonable effortは、考えられる合理的な手段のうち、「どれか1つ」を行えば、努力義務を果たしたことになる、という意味と捉えています。

 

ある目的を果たすためにとりえる「選択肢の全部」をしなければならないか、「その中の1つでよい」か、という違いの様です。

 

以下に、その裁判の判断部分を示します。

 

Rhodia v. Huntsman (2007)

“an obligation to use reasonable endeavors to achieve the aim probably only requires a party to take one reasonable course, not all of them, whereas an obligation to use best endeavors probably requires a party to take all reasonable course he can.”

 

「その目的を果たすために「合理的な努力を果たす義務」は、おそらく、契約当事者が合理的な手段の全てではなく、その1つを取ることを求めているに過ぎない。一方、「最大限の努力を果たす義務」は、おそらく、契約当事者に、彼がなし得るあらゆる合理的な手段を取ることを求めている。」

 

※effortは代わりに上記の様にendeavorが使われることがあります。

 

対策

では、上記を踏まえると、契約書をチェックする際には、どうするのが望ましいのかといえば、それは、できるだけ、自社の努力義務はreasonable effortと、相手に努力義務を貸す際には、best effortとする、ということになるでしょう。

 

差があるという判断がなされるか否かは不明でも、差があると判断される可能性があるのであれば、上記の様な対応がリスク対策としては望ましいといえますよね。

 

さらに、努力義務を定める際に、「これは果たしてもらわないと困る」という場合には、以下の様にその義務を明記しておくべきでしょう。

 

~reasonable effort, including [含ませたい行為]

 

逆に、「これは努力義務の中に含ませたくない」と思うものは、以下の様に、その義務を明確に外しておくことが考えられます。

 

~best effort but without [含ませたくない行為]

 

ちなみに、EPC契約(設計~建設契約)などでは、工事の作業が遅れた場合に、その遅れができるだけ拡大しないように、コントラクターには努力義務が課されていることが多いです。そしてこの影響拡大防止義務(mitigationと呼びます)を果たすことが、コントラクターがオーナーに対して、納期延長のクレームを行うための条件とされています。以下、条文例です。

 

The Contractor shall constantly use his best endeavors to prevent delay in the progress of the Works, however caused, and to prevent the completion of the Works being delayed.

 

「コントラクターは、仕事の進捗における遅れを防止するうために、そして、もしも遅れが生じた場合には、仕事の完成(納期)に遅れが生じないように、最大限の努力を常に果たさなければならない。」

 

目次
第1回 義務 第10回 ~に関する 第19回 知らせる
第2回 権利 第11回 ~の場合 第20回 責任
第3回 禁止 第12回 ~の範囲で、~である限り 第21回 違反する
第4回 ~に定められている、~に記載されている 第13回 契約を締結する  

第22回 償還する

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) 第14回 契約締結日と契約発効日 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)
第6回 ~に従って 第15回 事前の文書による合意 第24回 故意・重過失
第7回 ~に関わらず 第16回 ~を含むが、これに限らない 第25回 救済
第8回 ~でない限り、~を除いて 第17回 費用の負担 第26回 差止
第9回 provide 第18回 努力する義務 第27回 otherwise

 

 

第28回 契約の終了

第38回 権利を侵害する 第48回 遅延利息
 

第29回 何かを相手に渡す、与える

第39回 保証する 第49回 重大な違反
 

第30回 due

第40回 品質を保証する 第50回 ex-が付く表現
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 第41回 補償・品質保証 第51回 添付資料
第32回 ~を被る 第42回 排他的な 第52回 連帯責任
第33回 ~を履行する 第43回 第53回 ~を代理して
第34回 果たす、満たす、達成する 第44回 第54回 下記の・上記の
第35回 累積責任 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している 第55回 強制執行力
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 第46回 証明責任 第56回 in no event
第37回 補償・免責 第47回 indemnifyとliableの違い 第57回 for the avoidance of
 
第58回 無効な 第68回 representations and warranties
第59回 whereについて 第69回 material adverse effect
第60回 in which event, in which case 第70回 to the knowledge of
第61回 株主総会関係 第71回 GAAP
第62回 取締役・取締役会関係 第72回 covenants
第63回 indemnifyとdefendの違い
第64回 Notwithstandingと責任制限条項
第65回 M&Aの全体の流れ
第66回 conditions precedent
第67回 adjustment

 

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。

 

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