取締役・取締役会関係の英単語 ~英文契約の基本的な表現 第62回~

      2019/11/16

前回は、株主総会関係の英単語をご紹介しました。今回は、取締役・取締役会関係の英単語です。

 

ます、取締役はdirectorです。

合弁契約の当事者、つまり新会社の株主がそれぞれ取締役候補者を指名することをnominatedesignateといいます。

指名されただけでは、まだその者は取締役にはなりません。その指名された候補者を株主総会で取締役に任命することをelectappointといいます。ここで初めて、指名された者が取締役になります。

 

指名する 動詞:nominate(名詞:nomination)、designate(名詞:designation)
任命する 動詞:elect(名詞:election)、動詞:appoint(名詞:appointment)

 

辞書を引くと、例えばnominateやdesignateには、「指名する」という意味の他に、「任命する」という意味があります。そのため、どちらでもよいようにも思えます。しかし、例えば、法務省が公開している日本国憲法の英文を見ると、次にように指名と任命は区別して使われています。

 

第6条 天皇は、国会の指名に基づいて、内閣総理大臣を任命する。

The Emperor shall appoint the Prime Minister as designated by the Diet.

天皇は、内閣の指名に基づいて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

The Emperor shall appoint the Chief Judge of the Supreme Court as designated by the Cabinet.

 

第67条 内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他の全ての案件に先立って、これを行う。

The Prime Minister shall be designated from among the members of the Diet by a resolution of the Diet. This designation shall precede all other business.

 

第68条 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。

The Prime Minister shall appoint the Ministers of State.

 

取締役は就任後に自らその職を辞めることがあります。これはresignationです。resignは「~を辞める、辞職する」です。一方、取締役の職を強制的に解かれること、辞めさせることをremoveといいます。

 

自ら辞める(辞職する) 動詞:resign(名詞:resignation)
無理やり辞めさせる(解任する) 動詞:remove(名詞:removal)

 

ここでも、日本国憲法の英文を例として挙げておきますのでご確認ください。

 

第68条2項 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

The Prime Minister may remove the Ministers of State as he chooses.

 

第70条 内閣総理大臣がかけたとき、又は衆議院総選挙の後に初めて国会の召集があったときは、内閣は、辞職をしなければならない。

When there is a vacancy in the post of Prime Minister, or upon the first convocation of the Diet after a general election of memberes of the House of Representatives, the Cabinet shall resign en masse.

en masseは「ひとまとめに」という意味です。よって、resign en masse総辞職する、となります。

 

取締役の職をofficeと呼びます。

取締役が任期途中で辞めるか辞めさせられて交代になる場合、もともとの取締役である前任者はpredecessor、そして後任者をsuccessorといいます。

また、取締役が一時的に抜けたその穴(欠員)をvacancyといいます。

 

取締役会はboard of directors(複数形のsが付く点にご注意ください)、取締役会の定足数はquorum、取締役会に出席することはpresent、そして賛成票はaffirmative voteです。取締役会を開催することをhold a board of directors(hold a meetingで「会議を行う」です)といいます。

 

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。

 

目次
第1回 義務 第10回 ~に関する 第19回 知らせる
第2回 権利 第11回 ~の場合 第20回 責任
第3回 禁止 第12回 ~の範囲で、~である限り 第21回 違反する
第4回 ~に定められている、~に記載されている 第13回 契約を締結する  

第22回 償還する

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) 第14回 契約締結日と契約発効日 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)
第6回 ~に従って 第15回 事前の文書による合意 第24回 故意・重過失
第7回 ~に関わらず 第16回 ~を含むが、これに限らない 第25回 救済
第8回 ~でない限り、~を除いて 第17回 費用の負担 第26回 差止
第9回 provide 第18回 努力する義務 第27回 otherwise

 

 

第28回 契約の終了

第38回 権利を侵害する 第48回 遅延利息
 

第29回 何かを相手に渡す、与える

第39回 保証する 第49回 重大な違反
 

第30回 due

第40回 品質を保証する 第50回 ex-が付く表現
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 第41回 補償・品質保証 第51回 添付資料
第32回 ~を被る 第42回 排他的な 第52回 連帯責任
第33回 ~を履行する 第43回 第53回 ~を代理して
第34回 果たす、満たす、達成する 第44回 第54回 下記の・上記の
第35回 累積責任 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している 第55回 強制執行力
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 第46回 証明責任 第56回 in no event
第37回 補償・免責 第47回 indemnifyとliableの違い 第57回 for the avoidance of
第58回 無効な
第59回 whereについて
第60回 in which event, in which case
第61回 株主総会関係
第62回 取締役・取締役会関係

 

 - 英文契約の基本的な表現の習得