納期遅延LDの条文例と構造の解説

      2019/11/17

EPC契約において、納期に遅れた場合には、コントラクターはオーナーに納期遅延LD(詳しくはこちら!)を支払う責任を負うのが一般的です。以下に、その場合の条文例を示します。

 

例文

If a Plant does not achieve the Substantial Completion by the Guaranteed Substantial Completion Date for such Plant, as such date may be extended pursuant to this Agreement, the Owner’s remedy for such delay shall be to recover from the Contractor as liquidated damages, and not as a penalty, liquidated damages (“Delay LD”) as follows:

 

For the first [ ] months following the Guaranteed Substantial Completion Date [ ] Dollars ($[ ]) /Day
Thereafter [ ] Dollars ($[ ]) /Day

 

「もしも、あるプラントが、その保証された実質的完成日(その日は、本契約に従って延長され得る)までに実質的完成を果たせない場合、かかる遅れのためにオーナーが得る救済は、ペナルティとしてではなく、予定された損害賠償金額として、コントラクターから以下の様に予定された損害賠償額(以下、「納期遅延LD」)を回収することであるとする。」

保証された実質的完成日の後、最初の[ ]カ月間 [ ]ドル/日
その後 [ ]ドル/日

 

構造

下線部分はIf節です。黄色部分が主語部分となります。

 

英単語

1.the Substantial Completionとは、「実質的完成」です。ただし、何を持って実質的完成というかは、契約書や仕様書に具体的に記載されています。そして、the Guaranteed Substantial Completion Dateは「保証された実質的完成日(コントラクターが実質的完成に至らせることを約束した日、という意味)」で、いわゆる「納期」を意味しています。

 

2.remedyとは、「救済」です。簡単にいうと、「契約に違反した者に対してなし得る請求」です。ここでは、その救済が「LDを得ること」と定められています。

 

3.as follows:は、「以下の様に~」という意味です。その下に表を持ってくる場合などによく使われる表現です。主語の時制に関わりなく、常にfollowsと三人称単数のsがつきます。通常、コロン(:)を次に置きます。

例:

The results are as follows:

 

ポイント

1.例文の黄緑色部分は、初めて読むと難しいかもしれません。一度当事者間で合意した納期がありますが、それが契約締結後に「コントラクターに原因がない遅れ」、例えば、Force Majeure法令変更、さらには、オーナーに原因がある遅れが生じた場合には、コントラクターが契約に従って適切に納期を延長するようにオーナーに求めれば、納期が延長されるという建付けになっているのが通常です。黄緑色部分は、そのような「契約上の納期が延長される場合があること」を意味しています。

 

2.例文では、納期遅延LDの金額は一定ではなく、遅れの程度で差を設けています。このような場合には、例文の様に、「以下のようにLDを支払う」として、LDの金額を表形式にして定めると簡単で便利です。

 

3.赤色部分にnot as a penaltyとあります。これは、英米法の下では、当事者間で懲罰的な損害賠償(=ペナルティ=penalty)を課すことは禁止されていることと関係します。

納期遅延LDはオーナーが実際に被る損害額ではない金額を予め定めるものなので、懲罰的な損害賠償として無効であると裁判所や仲裁で判断されるリスクがあるといえます(そのようなリスクは決して大きくはないと思われますが)。そこで、契約書に「これはペナルティではない」と明記されることがあります(英米法系のしっかりした法律事務所が作成した契約ドラフトでれば大抵定められてきます)。

LDについて興味がある方は、こちらの記事もお勧めです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Delay Analysisの基礎知識】

納期に遅れた場合に納期遅延LDを課されるのを防ぐためには、納期を延長するようにオーナーに請求すること(EOTクレーム=Extension of Time claim)が必要になります。そのためには、Delay Analysis(遅れの分析)をしなければなりません。これについての基礎知識の解説が以下です。

 

【私が勉強した原書(英語)の解説書】

残念ながら、EPC/建設契約についての日本語のよい解説書は出版されておりません。本当に勉強しようと思ったら、原書に頼るしかないのが現状です。

原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。

EPC/建設契約の解説書 EPC/建設契約の解説書 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

 

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