同時遅延(Concurrent Delay)の扱い その②追加費用の扱い~これからプロジェクトマネージャーになる人のためのDelay Analysisの基礎知識⑧~

      2020/01/21

前の記事では、同時遅延が生じた場合のコントラクターによる納期延長クレームの可否について解説しました。

 

簡単にいえば、「コントラクターに原因がある遅れ」と「コントラクターに原因がない遅れ」の2つが同時に発生したからといって、コントラクターによる納期延長クレームが否定されるわけではない、ということでした。

 

では、納期が延長されることで生じる追加費用(prolongation cost)の負担についてはどのような扱いになるのでしょうか。

 

納期が延長されれば、それだけコントラクターは建設サイトに長い期間滞在することになります。当然、費用が追加で生じます。それは、同時遅延の場合にもオーナーに支払ってもらえるのでしょうか?

 

これも大いに問題になるもので、様々な説がありますが、ここでは英国プロトコル(Society of Construction Law Delay And Disruption Protocol 2nd edition Februry 2017)の指針をご紹介します。

 

それは、次の通りです。

コントラクターの原因でない遅れによって生じた追加費用分だけをオーナーに請求できる。」

 

つまり、「追加費用が、コントラクターの原因でない遅れから生じたのか、それともコントラクターの原因である遅れから生じたのか分別できない場合には、コントラクターはオーナーにその追加費用を請求することはできない」ということです。

 

これは、納期延長に伴う追加費用の負担の原則から導くことができる考え方といえます。

 

つまり、「コントラクターは、自分の原因で生じた遅れによって発生する追加費用をオーナーに請求することはできない」という原則です。自分が悪い場合には、自分が追加費用を負担するべき、ということです。

 

となると、コントラクターとしては、追加費用が自分のせいによる遅れから生じたものか、それ以外から生じたものかを証明しなければならない、ということになります。これは、必ずしも容易ではありません。様々な記録を保存しておかなければ到底できないでしょう。

 

今後解説予定のDelay Analysisを行うためにも、工事に関する工程や記録の保存が重要になりますが、追加費用の請求の際にも、そういった記録の保存が重要となるということの一例といえます。

【私が勉強した原書(英語)の解説書】

残念ながら、EPC/建設契約についての日本語のよい解説書は出版されておりません。本当に勉強しようと思ったら、原書に頼るしかないのが現状です。

原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。

EPC/建設契約の解説書 EPC/建設契約の解説書 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

【Delay Analysisの解説の目次】

DelayとDisruptionの違い 納期延長に伴って生じる費用(prolongation cost)について その③ 本社経費と逸失利益における因果関係と金額の立証方法
クリティカル・パス その① 納期延長クレームと追加費用クレームの関係
クリティカル・パス その② mitigationとacceleration

補足~constructive acceleration

フロートとは何か? Delay(遅れ)の種類(様々なDelay)
フロートは誰のものか? Delay Analysisの手法①~はじめに+Delay Analysisを行う時期~
フロートは誰のものか?契約書に記載がない場合 Delay Analysisの手法②~As planned impact method~
同時遅延の扱い その① 納期延長について Delay Analysisの手法③~Time Impact method~
同時遅延の扱い その② 追加費用について Delay Analysisの手法④~補足 工程表(プログラム)は契約書の一部なのか?~
納期延長に伴って生じる費用(prolongation cost)について その① Delay Analysisの手法⑤~Windows method~
納期延長に伴って生じる費用(prolongation cost)について その② 本社経費と逸失利益 Delay Analysisの手法⑥~as planned impact/Time Impact/Windowsの比較
21 Delay Analysisの手法⑦~EPC契約における工事の進捗状況のデータの取得・保管義務の定め~
22

必要な立証の程度~balance of probabilities~

 - Delay Analysisの基礎知識