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本郷塾で学ぶ英文契約

英語の契約書でTime is of the Essenceとは?

2024/02/21
 

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英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
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英文契約書の中には、Time is of the Essenceという文言が定められていることが時々あります。

これは、直訳すれば、「時間は重要だ」とか「時間は本質的だ」という意味になりますが、これを定めることでどのような効果が生じるのかを中心に、Time is of the Essenceについてここで初心者の方にもわかりやすく解説いたします!

 

Time is of the Essenceの”Time”とは?

この文言が、例えば売買契約の売主の製品供給義務について定められている場合には、このTimeは「納期」を意味していると考えてよいでしょう。

 

一方、この文言が、買主の対価支払い義務について定められている場合には、このTimeは「買主による支払い期限」と意味していることになります。

 

さらに、例えば建設契約において、注文者が請負人に対して、建設現場のサイトを明け渡すこと、つまり、そこで工事をできるように手配する義務について定める条文にこのTime is of the Essenceが定められている場合には、このTimeは「注文者による請負人へのサイト明け渡し義務の期限」を意味していることになります。

 

このように、Time is of the Essenceといっても、誰のどの義務について定めているかは、契約書を読んでみないとわからないのです。

 

Time is of the Essenceを定めることで生じる効果

次に、このTime is of the Essenceが定められることで、どのような効果が出るのでしょうか?

 

例えば、売主による製品供給義務についてこの文言が定められていた場合に、売主がTime、つまり納期に遅れたら、どうなるのでしょうか?

 

通常、納期に遅れたら、売主は買主に損害を賠償しなければなりません。

もしかして、このTime is of the Essenceという文言がない場合には、売主が例え納期に遅れたとしても、買主に損害を賠償しなくてもよいことになるのでしょうか?

「納期は重要だ」とはされていないのだから・・・。

 

そうではありません。

この文言があろうがなかろうが、売主は、納期に遅れれば、買主に対する損害賠償責任を負うことに変わりはありません。

 

このTime is of the Essenceは、「納期はとても重要なので、それに間に合わない場合には、買主は契約を解除できる」ということになります。

 

つまり、問題になるのは、「損害賠償」ではなく、「解除」です。

 

Time is of the Essenceと定められていたら注意すべきこと

売主や請負人としては、納期に少しでも遅れたからといって契約を解除されるというのは嫌なはずです。

よって、もしもTime is of the Essenceという文言が買主・注文者から提示された契約ドラフト中にある場合には、その意図をよく確認したほうがよいでしょう。

 

つまり、買主は、「納期に1日でも遅れたら契約を解除したいと考えているのか?」と。

もしもそうなら、売主は、納期に関していつも以上に厳格に考える必要が出てきます。

少なくとも、「納期に間に合わない場合には、納期遅延LDを支払えばよい」という考えで契約を締結するのは危険だといえます。

1日でも遅れた途端に、「解除する」といわれかねないからです。

 

建設契約やEPC契約にTime is of the Essenceが定められることは通常ない

ちなみに、建設契約においては、このTime is of Essenceという文言が納期について定められることは通常はありません。

 

その理由は、建設契約では、多少納期に遅れたというだけで、注文者は契約を解除しようとは考えてないのが通常だからです。

 

もちろん、納期に間に合ってほしいと注文者は考えているでしょうし、別に間に合わなくてもよい、などと考えてはいないはずです。

ただ、納期に遅れた場合には、納期遅延のliquidated damages(詳しくはこちら!)を請負人から支払ってもらえればよい、と考えているのです。

そのため、Timeは注文者にとって、Essence(必要不可欠)とまでは考えられていないのです。

 

もっとも、Time is of the Essenceと契約書に定められていなくても、納期に大幅に遅れ、当事者間で合意した納期遅延LDの上限額(詳しくはこちら!)にまで達したような場合には、注文主には契約を解除する権利が生じる旨が契約に定められているのが通常です。

 

この点、時々、納期に遅れた場合に備えて、納期遅延のLDを定めておきながら、一方で、Time is of the Essenceと定めている契約書も見かけます。

 

それは、おそらく、ドラフトした人が、Time is of the Essenceの使い方をよく理解していないのだろうと思われます。

よって、建設契約にTime is of the Essenceと定められている場合には、削除するようにしましょう。

 

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責任制限条項① Limitation of Liability/LOL 不可抗力の扱い③ Force Majeureの効果を得るための手続き 私がEPC契約で真っ先に確認する点③
責任制限条項② 適用される場合と適用されない場合 不可抗力の扱い④ Force Majeureが長期間継続した場合 LOIの何がリスクなのか?
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瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権 契約解除① なぜ解除の理由によって解除の効果が異なるのか? LOIへの対処法(社内的)
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作業中断権① 中断権の存在意義 契約解除④ コントラクターの債務不履行に基づくオーナーによる契約解除
作業中断権② 中断権行使の効果 契約解除⑤ 不可抗力事由が長期間継続した場合
不可抗力の扱い① Force Majeureとは何か? 私がEPC契約で真っ先に確認する点①
不可抗力の扱い② Force Majeureの効果 私がEPC契約で真っ先に確認する点②

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EPC/建設契約の解説書 EPC/建設契約の解説書 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

 

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