フロートは誰のものか?その②フロートに関する記載が契約書にない場合~これからプロジェクトマネージャーになる人のためのDelay Analysisの基礎知識⑥~

      2019/11/09

フロートが誰のものかが契約書に明記されていれば、その定めに従うことになります。

 

つまり、「フロートは、コントラクターのもの」と定められれば、コントラクターのみがフロートを消費することができます。フロートがついている仕事がコントラクターのせいでない理由で遅れた場合には、フロートが維持されるように納期が延長されることになるでしょう。

 

一方、「フロートは、プロジェクトのもの」と定められれば、コントラクターもオーナーもフロートを消費することができることになります。「プロジェクトのもの」とはそういう意味です。

 

そしてここで重要なのが、「フロートはプロジェクトのもの」とした場合には、要は、「早い者勝ち」となります。つまり、先に遅れを生じさせたものが、フロートを使うことができるということです。

 

前の記事で使った例によれば、フロート1ヶ月分を先にオーナーのせいで生じた遅れのために使い切ったあとに、たった1日だけコントラクターが遅れを生じさせた場合には、オーナーはなんら遅れについて責任を問われず、コントラクターだけが納期遅延の責任を負います(つまり、納期遅延LDをオーナーに支払わなければならないことになります)。以下の図はそれを示しています。

 

さて、それでは、契約書に、上記の様なフロートの定めが契約中にない場合には、一体どうなるのでしょう?

 

答えは、「決まっていない」です。

 

つまり、「契約書にフロートの定めがない場合には、どういう扱いとすべきか」という点について、世界共通のルールはないのです。

 

ただ、英国と米国においては、次のような傾向があるとされています。

 

英国の場合

契約書にフロートの帰属についての定めがない場合には、フロートは「プロジェクトのもの」と捉える。(参考文献:SOCIETY OF CONSTRUCTION LAW DELAY AND DISRUPTION PROTOCOL 2nd edition February 2017 / CONSTRUCTION DELAYS EXTENSIONS OF TIME AND PROLONGATION CLAIMS / 200 Contractual Problems and their Solutions)

 

米国の場合

契約書にフロートの帰属についての定めがない場合には、フロートは「コントラクターのもの」と捉える。(参考文献:200 Contractual Problems and their Solutions / Understanding & Negotiating Construction Contracts)

 

その他の国でどうなのかはわかりません。おそらく、このためかもしれません。通常はフロートの帰属についての定めは契約書にはないことが多いのですが、時々、明記されている場合があるのです。書いておかないとどういう扱いになるのかわからないので、明記しておこう、と考える弁護士やプロジェクトの契約担当者がいるのでしょう。

 

では、上記を踏まえた場合に、コントラクターの立場で、フロートの契約上の記載について気を付けるべきことは何でしょうか?

 

それは、少なくとも、「フロートは、オーナーだけが使うことができる」という定めがある場合には、削除するようにする、ということでしょう。例えば、以下のような条文です。

Any float in the construction schedule shall be for the exclusive benefit of the Owner.

「スケジュール上のフロートは、オーナーの排他的な利益のためにあるものとする。」

 

もしもこのような記載のまま契約を締結してしまえば、コントラクターはフロートを全く消費できないことになってしまいます。これはコントラクターにとって大変不利なことです。コントラクターとしては、フロートは、自分だけが使えるとするのが最も有利で、それが叶わなくても、自分も、そしてオーナーも使える、という扱いとするのは最低ラインでしょう。

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