合弁契約のポイント⑤~株式の「引き受け」と「払い込み」 その②出資比率に合意できない相手と合弁契約の交渉を進めても意味がない~

   

前の記事にて、合弁契約における出資比率を決める際に考慮すべき要素を紹介しました。それは以下の3つでした。

 

  • 外資規制
  • マジョリティ(51%以上)を取りたいか?(新会社の経営を支配したいか)
  • 特別決議事項も含めて支配したいか?

 

ここで、2つめの出資比率として51%以上を取りたいかどうかは、合弁契約を検討する際に本質となる問題です。それは、自社のみならず、相手方にとってもそうです。

 

「本質となる問題である」とは、一体どういうことか。これは、2社で新会社を設立する、という場合に、「どちらもマジョリティになりたい」と考えていた場合には、その2社で合弁契約を締結することは不可能だということです。かならず、どちらかがマジョリティになり、どちらかがマイノリティになります。これは数字の上から原理的にそうです。

 

よって、もしも、自社が51%以上を出資したいと考えている中で、合弁契約のパートナーを探す場合には、「マイノリティ出資でよい」と考えている企業を探す必要があります。

 

ここで、一緒に組むにはとても魅力的な企業を見つけたとします。しかし、その企業はマジョリティ出資を望んでいたとします。この場合、自社としては、その企業と合弁契約を交わすことができないのはもちろん、そもそも合弁契約の交渉に入ることも、時間の無駄です。

 

合弁契約書の中には、出資比率以外にも合意すべき事項がたくさんありますが、そのどの事項よりも、この出資比率こそが重要なのです。よって、仮に出資比率以外の全ての事項について円満に合意に到達できたとしても、出資比率について合意できなければ、契約締結とはなりません。

 

したがって、出資比率のような本質的な事項は、詳細な契約交渉開始前に相手方に確認をし、その点について折り合えないようなら、よほど特殊な事情がない限り、その時点で他のパートナーを探しに行く、というようにするべきです。

 

そうでないと、時間と労力を大量にかけたが、結局契約締結にはいたらなかった、しかもそのような結果になるのは、実は最初からわかっていたことだった、という事態に陥りかねません。

 

ここで、自社の出資比率はマイノリティに譲歩してもよいが、その代わり、新会社の経営に関する様々な事項については、法律で単純な過半数で決議できる事項も含めて、自社の同意がなければ決議できない(つまり拒否権をもつ)、という仕組みを合弁契約書中に盛り込むという方法も考えられます。これが実現できれば、実質的にはお互いにほぼ対等なレベルでの合弁契約となり得ます。

 

しかし、そもそも、マジョリティを取りたいと考える企業は、なぜそれを望むのかといえば、経営を支配したいからです。であれば、出資比率で51%以上を獲得しておきながら、他方でマイノリティが様々な事項に対して拒否権をもち、口出しできるという状態を普通は望まないでしょう。

 

つまり、上記に示したような、マイノリティ出資なのに、実質は対等な合弁契約など、まず結べるわけがないのです。

そもそも、新規事業を海外で立ち上げるのには、多大な時間が必要となります。合弁契約を締結したから、「では明日から事業を始めて、今年中によい業績を納める」などということは、簡単なことではありません。にもかかわらず、契約締結の見込みのない企業と長々と協議をするのは、得策とはいえないのです。

 

以上を踏まえて、合弁契約のパートナーを探す場合には、まずは出資比率に合意してくれる企業を探しましょう。具体的な契約条件の交渉は、その出資比率が大前提となります。

 - 合弁契約のポイント