フロートは誰のものか?その①~これからプロジェクトマネージャーになる人のためのDelay Analysisの基礎知識⑤~

      2019/11/07

フロートとは何かについて理解できたところで(こちらを参照ください)、フロートは誰に帰属するのか?という点を考えてみましょう。

 

上記の工程表の中で、S2の工程上の仕事dがオーナーのせいで1ヶ月遅れたとします。すると、以下のようになります。

つまり、まだ納期は3ヶ月目のままです。ここで、コントラクターのせいで1日だけ仕事dが遅れたとします。すると、どうなるでしょうか?以下のように、最初の納期よりも1日だけ完成が遅れることになりますよね。

この場合、コントラクターが遅れたことで納期に1日遅れた状態になるので、この1日分だけ、コントラクターは納期遅延のLD(liquidated damages)をオーナーに支払わなければならないことになる、といったら、どう思いますか?

「え?どうして?もともとは1カ月間の余裕があったのに、オーナーの遅れのせいでその余裕が全て食い尽くされたんでしょ?コントラクターはその後1日しか遅れていないのに、どうしてコントラクターが納期遅延LDを支払わなければならなくなるの?」

こう思う人もいると思います。これが正に、「フロートは誰のものか?」という問題です。

フロートを使えるのはコントラクターだけではない」という考え方を採用した場合には、最初にオーナーのせいで生じた遅れによって全てのフロートが消費されてしまうのです。そして、その後にコントラクターが1日でも遅れた場合には、「予定よりも遅れた日数」で見れば、オーナー:コントラクター=1ヶ月:1日となり、コントラクターの罪の方が軽いのに、結局責任を負うのはコントラクターということになるのです。

 

ここで、「フロートを使えるのはコントラクターだけ」という考え方を採用した場合には、全く別の結論が導かれます。最初にオーナーのせいで1ヶ月仕事dが遅れたとします。しかし、この場合にはフロートは消費されません(以下の工程表を参照)。つまり、コントラクターは、1カ月間という時間内であれば、遅れても納期遅延LDをオーナーに支払う責任を負わなくてよい、ということになります。コントラクターは、「納期遅延LDの責任を負うのは、自分の原因でフロートを使い果たした場合だけ」ということになります。

これは、「コントラクターのせいでない理由で遅れが生じた場合」には、コントラクターはフロート分だけ納期延長クレーム(EOTクレーム)をすることができる、とも言えます。

 

このように、「フロートは誰のものか?誰に帰属するのか?」は、コントラクターが遅れたときに納期遅延LDを支払う責任の有無と程度に大きな影響を及ぼす問題です。しかし、これほど重要な問題であるにも関わらず、通常、契約書にはこのフロートの帰属について明記されていません。その結果、実際にコントラクターのせいでない遅れが生じた場合に、フロートの帰属が問題となるのです。

 

では、契約書にフロートの帰属について定められていない場合、どのような扱いがなされるのが一般的なのでしょうか?それは次の記事で解説したいと思います。

フロートは誰のものか?その②フロートの関する記載が契約書にない場合~これからプロジェクトマネージャーになる人のためのDelay Analysisの基礎知識⑥~

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