クリティカルパスその①~これからプロジェクトマネージャーになる人のためのDelay Analysisの基礎知識②~納期延長クレームが認められるのは、クリティカルパス上の仕事に遅れが生じたときだけ!

      2019/11/05

クリティカルパス」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。おそらく、エンジニアなどの技術部門の人は知っているでしょう。しかし、例えば法務部でこれまでEPC契約にあまり関わったことがない人は初めて聞くかもしれません。この言葉の意味を知らないと、納期延長のクレーム(EOTクレーム)に関する議論には全くついていけなくなるといっても言い過ぎではない程重要な用語なので、ここでしっかり理解しましょう。

 

クリティカルパスとは、以下のようなものです。

 

プラントAを完成させるためにS1・S2・S3という三つの工程が必要であるとします。

工程S1・S2・S3はプロジェクトの開始から終了までの間に並行して進めることができる独立した工程で、相互に依存しないものです。

 

S1では三つの作業a・c・fをこの順番で行う必要があり、3か月を要します。

 

S2では作業b・dをこの順番で行う必要があり、2か月を要します。

 

S3では作業eを行い、1.5か月を要します。

 

上記三つの工程が順調に進めば3か月で製品を完成できますが、工程S1の作業a・c・fのどれか一つでも遅れると、プロジェクト全体の製造期間に遅延が生じます。

 

一方、工程S2には1か月、S3には1.5か月の余裕があります。

 

S1は、製品Pを最短時間で完成させるために遅れることのできない重要な工程であり、こうした一連の作業の経路(作業a→c→f)をクリティカルパスと呼びます。

 

これは、製品を完成させる複数の工程のうち最も期間の長い作業経路なので、最長経路とも呼ばれます。

 

このクリティカルパスは、納期延長のクレームを行う際にとても重要となります。その理由は、納期が延長されるのは、工程の遅れが、クリティカルパスに影響を及ぼす場合に限られているからです。

 

例えば、上記において、コントラクターに原因がない何らかの事象によって、工程S2が10日遅れたとします。この場合、コントラクターは、オーナーに対して10日間の納期延長を求めることができるでしょうか。

 

答えは、「できない」です。その理由は、S2の工程が10日間遅れたとしても、それはクリティカルパスであるS1の工程に何ら影響を及ぼさないので、プラントの完成時期には全く影響しないからです。

 

これはS3の工程の場合でも同じです。S3にも、1.5ヶ月の余裕があります。仮にS3の工程が不可抗力で10日間遅れたとしても、全体の完成日、つまり納期には影響がありません。よって、納期に影響が出ていないので、納期を延長させる必要がありません。

 

上記から理解して頂きたいことは2つあります。

 

1つ目は、EPC契約に定められたForce Majeureや法令変更といった「納期が延長される事象」が発生した場合でも、クリティカルパスに影響を及ぼさない場合には、納期延長はなされない、ということ。

 

2つ目は、オーナーに対して納期延長のクレームをするためには、クリティカルパスにどのような影響が出るのかをコントラクターが検討した上でオーナーに示す必要があり、その前提となるのは、以下です。

  • 契約締結時に計画されていた工程プログラム(as-planned programとも呼びます)
  • 実際にプラントが完成した際のプログラム(as-built programとも呼びます)
  • 例えば月毎等の仕事の進捗状況のデータ(progress dataとも呼びます)
  • 工程に影響を及ぼす事象が生じるごとに、都度改定された工程プログラム(updated programとも呼びます)

 

これらは、コントラクターが具体的にどれだけの影響を「納期が延長される事象」から受けたのか、オーナーに対して何日の納期延長をクレームするべきなのか、にかかってきます。これらのデータや工程プログラムがあいまいだと、適切な期間を延長してもらえないことにもなり得ますので、工事を進めて行く過程でしっかりとデータを採取・保存しておく必要があります。

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