DelayとDisruptionの違い~これからプロジェクトマネージャーになる人のためのDelay Analysisの基礎知識①~

      2019/11/05

Delay Analysisを学ぶ前提として、まず抑えておきたいのは、delaydisruptionの違いです。これは似ていますが別のものです。

 

まず、delayは、「遅れ」です。工程が時間的に遅れることを意味します。

 

一方、disruptionは、「妨げ」です。英英辞典を見てみると、次のように記載されています。

To make it difficult for something to continue in the normal way

つまり、「何かが通常通りに進むことを難しくすること」です。

 

具体的には、「作業効率が落ちること」が、disruptionです。例えば、ある仕事について、10人が5日かければ終了すると考えられていた仕事が、20人で5日間かけなければ終わらない状態に陥ったとします。これは、作業効率が落ちたといえます。このような事態をdisruptionと呼びます。

 

ちなみに、disruptionが生じた結果、delayが起こることがあります。上記の例のように、10人が5日間かければ終了すると考えられていた仕事が、何らかの事象が生じた結果、20人で5日間かけなければ終わらない事態に陥ったとします。しかし、当初の予定の10人に追加で10人をその作業に当てることができない場合には、当初の予定通り10人でその仕事をこなさなければなりません。この場合、2倍の10日間かかるはずです。工程に遅れが生じるわけです。これはdelayです。つまり、disruptionがdelayを引き起こしたことになります。

 

ここで重要になるのが、delayやdisruptionが生じることで、コントラクターが仕事を遂行するために追加費用を生じさせた場合、その追加費用は誰が最終的に負担するのか?という問題です。

 

まず、delayの場合を見てみます。何らかの事象(法令変更やオーナーによる建設サイト明け渡しの遅れなど)によって、工程に遅れが生じました。その結果、契約上の納期に5日間遅れることになったとします。この場合、コントラクターは、当初の予定よりも5日間長く建設サイトに滞在することになります。もちろん、遅れた仕事を完成させるためです。これにより、少なくとも、建設サイト運営費(例えば、建設サイトに設置しているトイレのレンタル費用や、電気・ガス・水道などの費用)が余計にかかります。これは、誰が負担するのかといえば、オーナーです(そのように契約に定めておくべきです)。

 

ただ、もしも、何らかの仕事の遂行が遅れたとしても、それが納期に影響を及ぼさない工程であることもあります。例えば、最初から5日間の余裕がある工程上の工事が3日間遅れたとしても、納期は1日も遅れないわけです(それどころか、まだあと2日間その仕事を遅らせても、納期には影響しません)。この場合には、納期が遅れない=コントラクターが当初の予定よりも長く建設サイトに滞在することにならないので、上記で示したような建設サイト運営費は追加で発生しません。よって、追加費用をだれが負担するのか、という話は出てこないのです。

 

上記の様に、何かの仕事が予定よりも遅れたからといって(つまり、delayがあったからといって)、直ちにコントラクターに追加費用が生じるわけではないため、この場合には、オーナーに追加費用を負担してもらう、ということにはならない、という点は重要ですので、しっかりと理解しておいてください。

(ちなみに、納期に影響が出る遅れはcritical delay、納期に遅れが出ない遅れはnon-critical delayと呼ばれるのが通常です。この点は、今後critical pathの解説で詳しく触れます。)

 

一方、disruptionはどうかというと、delayの場合とは異なるので注意が必要です。

 

何らかの事象によって、ある仕事についてのコントラクターによる作業効率が落ちたとします。disruptionです。例えば、10人で5日かけて終わるはずだった仕事を20人で5日かけないと予定通りのスケジュールで終わらないことになったとします。つまり、10人のままで仕事をすれば、10日間かかってしまうわけです。ここで、この仕事に10日もかけてしまえば、納期に遅れてしまうとして、コントラクターは人を増やして20人によって5日で仕事をやり遂げました。この場合、当然、コントラクターは追加で費用が生じているはずです。というのも、働く人員を10人から20人に増やしたからです。これによって生じた追加費用は誰が負担するのでしょうか?それは、disruptionの原因がコントラクターのせいでなければ、通常は、オーナーが負担すべきです。

 

ここで注目したいのが、delayの場合には、納期に影響が出ない限り、delayから生じる追加費用の負担の問題は出てこないのに、disruptionの場合には、納期に影響が出なくても、コントラクターには追加費用が生じるので、それをオーナーに負担してもらうべき、ということになる、という点です。

 

delay(工程の遅れ)→納期に遅れが生じた場合にのみ、オーナーに追加費用を請求できる。

disruption(作業効率の低下)→納期に遅れが生じなくても、オーナーに追加費用を請求できる場合がある。

 

なお、このdisruptionによって生じる追加費用がいくらになるかの検討は、Disruption Analysisと呼ばれています。Delay Analysisと合わせて抑えておきましょう。

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