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納期遅延LDの決め方~発電所案件の一例~

   

EPC契約で登場するliquidated damages(LD)には、以下のようなものがあります。

 

・納期遅延LD

・性能LD

・稼働率LD

 

今回は、納期遅延LDの定め方の一例を紹介します。

 

納期遅延LDは、「請負者であるコントラクターが納期に一日遅れたら発注者であるオーナーはどれだけの損害を被るのか?」という視点で定められます。ここでは、発電所建設案件の場合を紹介します。

 

まず、発電所の建設が遅れると、その発電所の運転開始時期が遅れることになります。運転開始が遅れれば、オーナーが電気を売るのも遅れます。その結果、電気を売ることの対価を得るのが遅れます。

 

ここで、オーナーはコントラクターに支払うEPC契約の対価について銀行などの金融機関から融資を受けている場合が多いです。というのも、EPC契約の対価は莫大な金額であることが多く、オーナーの自己資金だけで賄うことは難しいためです。

 

オーナーはその融資分を銀行に返済する義務を負っていますが、その返済のための資金は発電所の運転から得られる利益です。つまり、発電所の運転が遅れれば、その分、融資を受けた金額を返済するだけの資金を得るのも遅れ、その結果、返済が遅れます。

 

そうすると、返済が遅れたことによる遅延利息をオーナーは銀行に支払わなければならなくなります。これが、納期遅延によってオーナーが被る損害の代表的なものです。

 

これはプラント建設中に生じる利息であることから、「建中利息」と呼ばれます。英語でいうと、interest during constructionで、頭文字をとって「IDC」とも呼ばれます。

 

また、発電所完成前から、その発電所から生み出される電気を購入する契約、つまり、買電契約を締結している者がいます。この者を通常、「オフテイカー」と呼びます。このオフテイカーとオーナー間の買電契約書の中には、電気が売られ始める期限が定められており、その期限までに売電が開始されない場合には、オーナーがオフテイカーに対して遅延LDを支払うことが定められていることもあります。その場合、この遅延LDも、発電所の完成が納期に遅れたことによってオーナーが被る損害となります。

 

よって、①銀行への返済遅延によって生じる遅延利息、および②オーナーがオフテイカーに対して支払う必要がある遅延LDを基準にして、コントラクターがオーナーに対して賠償する納期遅延LDの金額が算出されることになります。もしもオーナーが提示する納期遅延LDの金額がこれらよりもはるかに大きい場合には、「それは実際にオーナーが被る損害よりも高すぎる」として、より小さい金額に修正を申し入れます。

 

ここで特に気を付けたいのが、オーナーが、「納期に遅れなければ得られたはずの利益」をLDに含めてきた場合には、拒否するべきです。この利益は、逸失利益(loss of profit)と呼ばれます。逸失利益は莫大な金額になる可能性が高いです。このようなものをコントラクターが負担させられることになれば、倒産するリスクもあります。逸失利益をLD算定の根拠にしてはいけないという決まりはありませんが、コントラクターとしてはできる限り拒否するべきです。

(※逸失利益とは何か?と逸失利益に関する条文の注意点はこちら!「間接損害と逸失利益の違い」)

 

ここで、「オーナーから銀行に支払うべき遅延利息、およびオーナーからオフテイカーに支払う遅延LDはどのようにわかるのか」という疑問を持つ人もいるかもしれません。これは、オーナーに質問するのです。このような質問をして回答を得られない場合には、次のように主張します。

 

「LDは、いくらでもよいわけではありません。算定根拠がない場合、LDについて定めた条項それ自体が無効と判断される可能性もあります。無効となると、オーナーが実際に被った損害を証明しない限り我々コントラクターは賠償する必要がなくなります。」

 

LDは、「実際に生じ得る損害」に代わるものなので、何ら根拠がない金額の場合には、裁判所や仲裁は無効と判断する可能性があります。無効になったときに困るのは、コントラクターよりもむしろオーナーのほうです。そこで、上記の様に主張し、適切な納期遅延LDの金額を算定するようにオーナーに対して促すのがよいでしょう。

 

次回は、火力発電所案件の性能LDの算出方法の一例をご紹介します。

 

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