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本郷塾で学ぶ英文契約

英文契約のLD(リキダメ)とPenalty(ペナルティ)の違い

2024/01/13
 

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英文契約基礎から実践講座

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英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
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Liquidated Damages(以下、「LD」)とPenaltyは、時々同じものとして認識されていることがあります。

 

しかし、契約上、全く異なるものです。

 

英米法の下では、Penaltyは無効となります。一方、LDは有効です。

 

両者の違いについて解説します。

 

まず、LDは、予め契約当事者間で、契約違反が生じた場合に違反した当事者がどれだけ賠償しなければならないのかについて合意したものです。

これは、あくまで、損害賠償です。

つまり、契約違反によって相手方に金銭的な凹みが生じた部分を補填するものです。

 

一方、Penaltyは、罰金であり、これは金銭的な凹みを補填するためのものではありません。

Penaltyの目的は、「契約違反に対する罰」であり、同時に、「二度と同じ過ちをするなよ」と戒めることを目的としています。

 

とはいえ、契約書上、それがLDなのかPenaltyなのかは、なかなか判別しにくいです。

 

というのも、LDかPenaltyかの判断は、文言を形式的にみて行われるのではなく、実質的に行われるからです。

 

例えば、契約書に、the Contractor shall pay USD 1 million to the Owner as a penalty.と定められていたとしても、必ずしもPenaltyと判断されるわけではありません。

具体的には、「契約締結時に両当事者間でどのような協議が行われ、いかなる根拠に基づいてその数字を定めることになったのか?」が裁判官や仲裁人によって検討されることになります。

 

ここで重要となるのは、検討されるのは「契約締結時点にどうであったか」という点です。

損害発生時を判断の基準とするのではありません。

 

例えば、契約締結後、コントラクターが納期に遅れたにも関わらず、オーナーはほとんど損害を被らなかったとします。

しかし、だからといって、「これはPenaltyだ」と判断されるわけではありません。

この場合でも、契約締結時点で、もしも納期に遅れた場合にはどのような損害が生じ得るかを検討した結果、合理的と言える算定方法を用いて賠償金額を予定したのであれば、結果的にほとんどオーナーに損害が生じていなくても、それはLDとして有効となります。

コントラクターはその金額をオーナーに支払わなければなりません。

 

なお、契約書に合意した数字について、後から「Penaltyだから無効だ」とコントラクターが主張する場合の立証責任はコントラクター(請負者)にあります。

つまり、契約締結時にオーナーと協議した際の記録を示し、「金銭的な凹みを補填する」という目的から逸脱するような決め方をした、という点を証明しなければなりません。

 

ここから言えることは、「契約締結時に当事者間で協議したLDの算定根拠についての記録は、残しておくべき」ということです。

 

この点、一度契約書に合意した数字がPenaltyだと裁判所が認めることは稀であるようです。

裁判所は、余程のことがないと、Penaltyだと認めてくれないと考えておいた方がよいでしょう。

それだけ、コントラクターは契約交渉時点で正当だと納得できるLD金額で合意しておく必要があると言えます。

 

※ちなみに、最初に「英米法ではLDは有効だがPenaltyは無効」と説明しましたが、日本ではPenaltyも有効です。

 

目次
第1回 義務 第10回 ~に関する 第19回 知らせる
第2回 権利 第11回 ~の場合 第20回 責任
第3回 禁止 第12回 ~の範囲で、~である限り 第21回 違反する
第4回 ~に定められている、~に記載されている 第13回 契約を締結する  

第22回 償還する

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) 第14回 契約締結日と契約発効日 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)
第6回 ~に従って 第15回 事前の文書による合意 第24回 故意・重過失
第7回 ~に関わらず 第16回 ~を含むが、これに限らない 第25回 救済
第8回 ~でない限り、~を除いて 第17回 費用の負担 第26回 差止
第9回 provide 第18回 努力する義務 第27回 otherwise

 

 

第28回 契約の終了

第38回 権利を侵害する 第48回 遅延利息
 

第29回 何かを相手に渡す、与える

第39回 保証する 第49回 重大な違反
 

第30回 due

第40回 品質を保証する 第50回 ex-が付く表現
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 第41回 補償・品質保証 第51回 添付資料
第32回 ~を被る 第42回 排他的な 第52回 連帯責任
第33回 ~を履行する 第43回 第53回 ~を代理して
第34回 果たす、満たす、達成する 第44回 第54回 下記の・上記の
第35回 累積責任 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している 第55回 強制執行力
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 第46回 証明責任 第56回 in no event
第37回 補償・免責 第47回 indemnifyとliableの違い 第57回 for the avoidance of
 
第58回 無効な 第68回 representations and warranties
第59回 whereについて 第69回 material adverse effect
第60回 in which event, in which case 第70回 to the knowledge of
第61回 株主総会関係 第71回 GAAP
第62回 取締役・取締役会関係 第72回 covenants
第63回 indemnifyとdefendの違い
第64回 Notwithstandingと責任制限条項
第65回 M&Aの全体の流れ
第66回 conditions precedent
第67回 adjustment

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。
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