履行保証ボンド

      2019/11/18

履行保証ボンド

 

履行保証ボンドとは、契約締結後速やかにオーナーに提出することが求められているのが一般的です。

 

このボンドは、コントラクターによるEPC契約上の義務の履行を保証するための保証状です。

 

EPC契約においては、コントラクターは様々な作業を、契約に定められたスケジュールで遂行する義務があります。

 

建設するプラントも、ただ作ればよいわけではもちろんなく、契約書に定められた機能・性能を満たしている必要があります。

 

これらを満たすことができない場合、それはコントラクターの契約違反となります。

 

この契約違反に陥った場合にオーナーが被った損害については、オーナーがボンドを没収することで、それを補填することができます。

 

 

履行保証ボンドが使われる具体例

 

例えば、コントラクターが納期に遅れたとします。

 

納期に遅れると、オーナーは、運転を予定通りに行うことができなくなり、そのため、金銭的な損害を被り得ます。

 

その損害を、オーナーは銀行にボンドを持って行って、「損害分○円を支払って」と言って、銀行からお金を支払ってもらうのです。

 

オーナーとしては、ボンドを使わなくても、コントラクターから直接損害を賠償してもらうという方法ももちろんあります。

 

しかし、コントラクターは、こういう場合には、色々と反論するのが通常です。

 

例えば、「納期に遅れたのは、自分たちだけのせいじゃない」とか、「この遅れは、オーナーが適切に協力してくれなかったからだ」など。

 

オーナーとしては、すぐに損害賠償をしてもらいたいのに、コントラクターのこのような反論にいちいち構っていては面倒でしょう。

 

そこで、ボンドを銀行にもっていけば、コントラクターが色々と反論してきたとしても、オーナーは損害分を補填してもらえるのです。

 

このようにボンドは、オーナーにとっては、とても強力な武器です。逆にコントラクターにとっては、人質を取られているようなものだと私は思います。

 

 

履行保証ボンドの保証金額

 

一般的に、履行保証ボンドの保証金額は、契約金額の30%前後のものが多いように思います。といっても、これもケースバイケースで、プラントの種類、契約金額、そしてオーナーの存在する国ごとにも差があるようです。

 

EPC契約における契約金額は数十億~数百億、時には数千億円にも上ることを考えると、契約金額の30%程度を保証するというのは、大変な金額ですよね。こんな金額がon demandで没収されえるというのはなんだか怖いですね。

 

 

履行保証ボンドの返還時期

 

この履行保証ボンドの返還時期は、原則として、以下の条件が満たされたときとされているのが一般的です。

 

  • ① プラントの検収条件が満たされた場合で、かつ、
  • ② 瑕疵担保保証ボンドが差し入れられた場合

 

プラントの検収条件が満たされた場合というのは、つまり、EPC契約上のコントラクター義務が、瑕疵担保保証義務を除いて完了したことを意味します。そして、瑕疵担保保証義務を保証するための瑕疵担保保証ボンドを代わりに差し入れることで、履行保証ボンドを返還してもらえるわけです。これは、前回ご説明した、入札保証ボンドの返還が、履行保証ボンドの差入を条件としている点に似ていますね。

 

つまり、オーナーは、EPC契約の期間中、常に何らかのボンドを保持し続けることができるようになっているのです。どなたが最初に考えた仕組みかは知りませんが、徹底したオーナー保護の姿勢を感じますね。

 

この履行保証ボンドについても、もしも契約の中に、その返還時期や条件が定められていない場合には、必ず明記するようにしましょう。

EPC契約のポイントの目次

Scope of Work ボンドのon demand性を緩和する方法 プラントの検収条件と効果
サイトに関する情報 コントラクターによる仕事の開始時期(納期の起算点)は? 危険の移転時期とその例外
オーナーの義務 仕事の遂行 債務不履行
契約金額の定め方と追加費用の扱い 設計(design)の条文について① 納期延長の場合のコントラクターの責任① 納期延長になる場合
追加費用の負担について 設計(design)の条文について② 納期延長の場合のコントラクターの責任② LD/リキダメ
ボンドについて 仕様変更① 仕様変更とは? 納期延長の場合のコントラクターの責任③ 納期LDの上限
入札保証ボンド 仕様変更② クレーム手続きと仕様書に書かれていない事項 納期延長の場合のコントラクターの責任④ sole and exclusive remedy
前払金返還保証ボンド 仕様変更③ 納期延長と追加費用の金額が合意に至らない場合の扱い 納期延長の場合のコントラクターの責任⑤ 中間マイルストーンLD
履行保証ボンド プラントの試験① 性能未達の場合のコントラクターの責任① 性能保証と性能確認試験
瑕疵担保保証ボンド プラントの試験② 性能未達の場合のコントラクターの責任② 最低性能保証・性能LD
責任制限条項① Limitation of Liability/LOL 不可抗力の扱い③ Force Majeureの効果を得るための手続き 私がEPC契約で真っ先に確認する点③
責任制限条項② 適用される場合と適用されない場合 不可抗力の扱い④ Force Majeureが長期間継続した場合 LOIの何がリスクなのか?
瑕疵担保責任① 総論 法令変更について LOIへの対処法(対外的)
瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権 契約解除① なぜ解除の理由によって解除の効果が異なるのか? LOIへの対処法(社内的)
瑕疵担保責任③ 保証期間の延長 契約解除② オーナーの義務違反に基づくコントラクターによる契約解除 EPC契約における支払い条件
瑕疵担保責任④ Disclaim(免責)条項 契約解除③ オーナーの自己都合解除
作業中断権① 中断権の存在意義 契約解除④ コントラクターの債務不履行に基づくオーナーによる契約解除
作業中断権② 中断権行使の効果 契約解除⑤ 不可抗力事由が長期間継続した場合
不可抗力の扱い① Force Majeureとは何か? 私がEPC契約で真っ先に確認する点①
不可抗力の扱い② Force Majeureの効果 私がEPC契約で真っ先に確認する点②

 

【私が勉強した原書(英語)の解説書】

残念ながら、EPC/建設契約についての日本語のよい解説書は出版されておりません。本当に勉強しようと思ったら、原書に頼るしかないのが現状です。

原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。

EPC/建設契約の解説書 EPC/建設契約の解説書 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

 - EPC契約のポイント