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全体で勝てない勝負で自分に残されている道は何か?

      2017/03/10

 

入社して丸2年がたったころの私は、人生の中で最も「できない」やつでした。

 

配属された企業法務部の仕事について、「まともにこなせない」そう思う日々を送っていました。

 

特に、英語がかかわると、私の仕事能力は、格段に落ちました。

 

日本語での私の仕事能力を10だとすると、英語の仕事になったとたんに、それは2くらいに落ちました。

 

そして、日常業務の半分以上は、何かしら英語が絡む仕事でした。

 

つまり、私は会社において、常に自分のことを、「何もできないやつ」と思わざるを得ないような状況にありました。

 

あのころの自分は、例えるなら、水の中で走らされているような感覚でした。

 

陸に上がれば思いっきり走り回れるのに水の中だと思うように走れない。

 

とはいえ、息継ぎがうまくできないので、華麗に泳ぎ回ることもできない。

 

不自由極まりない、という感覚でした。

 

そんな私に、ある日、部内のある先輩が、こう言いました。

 

「私がやっているインドの案件、一緒にやりましょう。もう、部長には許可を得ています。」

 

その先輩は、うちの会社とインドの会社との合弁会社を設立する案件を担当していました。その合弁会社の設立後は、インドに工場を建設するというものでした。投資規模はかなりのものでした。

 

私は、そういわれたとき、こう思いました。

 

「やりたくねえな・・・。」

 

なぜなら、インドの企業との間で合弁会社を設立する仕事であれば、確実に英語を使うからです。そんな案件に入っても、自分は何もできないことが目に見えていました。

 

しかし、周りの同年代の同僚や同期に、「今度インドの案件にかかわることになった」と憂鬱げにいうと、意外にも、羨ましがられました。

 

「絶対、いい経験になるよ」

 

みな口々にこう言いました。

 

私は、「英語ができるのであれば、確かにいい経験になるだろうけど、こんなに英語ができない自分では、単に苦労するだけで、いい経験にはならないだろう」と思いました。

 

実際、案件にかかわるようになってから、それまでよりも英語に触れる時間が格段に増えました。インドのパートナー企業との間で締結されるべき合弁契約を読んで事業部門の人と会社としての案を検討したり、インドに会社を設立するための手続きを調べるために、インドの政府機関のホームページを見て設立手続きを英語で読んだり、会社設立に必要となる書類を英語で作成したり、インド人の会計士にメールで質問したり・・・。来る日も来る日も、電子辞書を何度ひいたかわからないほど引きまくりました。

 

最初は、自分には何もできることはないだろうと思っていましたが、電子辞書を使えば何とかできる仕事、つまり、単に英語を読んだり、書いたりする程度のことであれば、時間をかければ何とかこなすことができました。

 

ただ、英語を話す、聞く、という場面では、私は本当に無力でした。

 

ある日、インドの弁護士にうちの会社に来てもらい、合弁契約についての協議をする場がありました。

 

その時、私はそのインド人弁護士が話す英語が全く分かりませんでした。私が彼に英語で何か質問することもできませんでした。

 

そんな状態なので、会議では、議事録を取るためにペンを一応右手に常に持ってはいたものの、そのペンで何かを書くことはできませんでした。

 

このことで先輩に怒られたということはありませんでしたが、私は、「やっぱり、英語の会議では自分は役立たずだな」と思いました。自分には、英語で電子辞書を使って読んだり書いたりする程度の雑用しかできない、そう思っていました。そして、それでも十分じゃないか、とも思いました。まだ会社に入って3年目だし、どうせこの件の出張も、先輩がインドに行けばよく、私は東京で待機してればいい。そう思っていました。

 

しかし、意外なことが起きました。

 

インドのパートナー企業との合弁契約のインドでの協議に、私も現地に出張して参加することになったのです。

 

法務の出張費用は事業部門が持つのですが、コスト削減の観点から、法務からの出張は、メインの担当者一人だけの出張に抑える、というのが通常の扱いでした。

 

しかし、当時の部長や先輩が、英語ができず、かつ海外案件が不慣れな自分に、少しでも経験をさせようと思ってくれたようで、事業部門に相当な無理を言って、私も出張できるように手配してくれたようなのです。

 

私はそれを聞いて、こう思いました。

 

「そんな余計なことしてくれなくていいのに・・・。」

 

私は、現地に行っても、何もできないであろうことを知っていました。今全く英語を聞き取ることも話すこともできないのに、1週間後にインドに行って、いきなりそれができるようになるわけがないのです。

 

先輩や部長は、私に経験のため、と手配してくれたようですが、もう少しできるレベルであったなら、確かに何かをつかむ経験になるかもしれませんが、今の私のレベルでは、全く経験にならない、と思っていました。

 

さらに、現地で数日間の交渉中に、一文字も議事録を書けないでただ座っている自分を想像すると、出張に行きたくなくてしょうがありませんでした。

 

そうして、私はあろうことか、こんな風にすら思うようになっていました。

 

「自分が出張に行きたいと頼んだわけでもないのだから、インドに行ってなにもできなくても、しったことか」

 

確かに、先輩や部長に対して、ありがたい、という気持ちはありました。しかし、同時に、「こういうのを、有難迷惑というのだろうか」とも思っていました。

 

そんな出張直前のある日、私はインド案件を一緒にやっている先輩とは違う先輩と一緒に担当している案件で、外部の弁護士事務所のところに相談に行くために、丸の内のそのオフィスに外出しました。

 

そしてその帰りにカフェによって、コーヒーを飲んでいるときに、来週からインドに出張することになったことをその先輩に伝えました。そして私は、自分が思っていたことを正直にその先輩に話しました。

 

「いやー、なんていいますか、今の私にはきっと何もできないので、ずっとテーブルに座っているだけの出張になると思うんですよ。経験させようと思っていただけるのはありがたいんですが、そんな感じでもしょうがないですよね?」

 

私は、てっきり、「そう、それは大変だね。まあ、行くだけでもいい経験になると思うから」といった感じのことを言ってもらえると思って、いや、ぜひそう言ってほしくてこの話を先輩にしたのです。しかし、その先輩は静かな口調でこう言いました。

 

「どうして、何もできないと思うの?」

 

「え?いや、だって、私、英語全くできないんですよ?会議の場にいても、何が話されているかわからないんです。」

 

「何を言っているのかわからないときは、聞き返せばいいじゃない。」

 

いや、私の英語のできなさはそんな生易しいレベルではないんです。聞き返したところで聞こえるくらいのレベルであれば、「もう一回言って」と言えます。しかし、何度同じことを言われても、私は相手の言っている英語を理解できない自信がありました。なので、このとき先輩が、「聞き返せばいいじゃない」と言ったのは私の英語レベルをわかっていないな、と思いました。

 

「いや・・・。聞き返しても・・・。」

 

「会議の最中に英語で発言できないとしても、合弁契約において社内で承認が取れた範囲が何かをしっかりと理解しておき、協議の中で、先輩や事業部の人たちがそれを超えるような合意をしようとしたら、「それは承認の範囲外です」と教えてあげるとかはできるよね?協議の中でまとまらなかった論点をまとめておき、会議後にみんなにそれを送付するとか、色々とやれることはあるよね?英語が苦手なのはわかるけど、だからといって、出張先で何もせずに座っていてよい理由にはならないよ。」

 

「はあ、まあ、確かに・・・。」

 

「本来、法務から出張に2名行けるなんてことは滅多にないことなんだよ。それに今回行かせてもらえるということはどういうことか、よく考えたほうがいい。少なくても、単に座っているだけでいい経験になるなんてことはないんだよ。英語ができなくても、他にやれることはいくらでもあるはずだ。それを自分なりに探して、何か少しでも貢献しようと思わないと、いつまでたっても海外案件をこなすことなんてできないんじゃないかな。」

 

 

 

その夜、先輩に言われたその言葉を、私は繰り返し思い出してはこう思いました。

 

「自分は、本当に英語が聞き取れない、自分から英語を発することもできない。そんな状態では、議事録もかけないし、論点がどこかなんてわかるはずがないし、社内承認の範囲を超える合意がなされようとしているかどうかもわからないじゃないか。」

 

しかし、それと同時に、先輩が言わんとしていることも十分にわかっていました。「とにかく何かしら自分にできることを探してやれ!」ということです。

 

この時ほど、英語が話せない、聞こえない、ということを恨めしく思ったことはありません。英語さえできれば、こんなことで悩まなくて済むのに・・・。

 

とはいえ、出張までの期間を考えると、自分の英語が急激に上達することはないので、他のことで頑張るしかありません。どうしたらいいのか・・・。

 

やむなく私は、合弁契約書をしっかりと読み込み、その上で、事前にインドのパートナー企業が合意できないと書いてきた英語の論点リストを電子辞書を引きながら何度も読みました。そして、社内承認資料も暗記するほど読み込みました。こんなことをしても、現地での交渉が始まれば、一体何が議論されているのかもわからない状態になり、おそらく無駄になるのだろうな・・・と思いつつ。

 

しかし、実際インドに出張し、議論が開始されると、意外なことが起きました。

 

インド人の英語は相変わらず聞こえませんでしたが、自分の会社の日本人の英語はほぼ聞き取れたのです。また、うちの会社内だけでの相談タイムの時も、先輩や事業部の方が協議している内容をしっかりきき、そこから今問題にされている点が何かを推測するように心がけました。

 

そのため、議論の半分は理解できたように思います。

 

半分理解できると、今何が議論されているのか、何が両者の間で問題になっているのか、その論点についての結論はどうなったのか(合意か、保留か)がだいたいわかりました(あくまでだいたいです)。

 

おそらくこれは、事前に契約書や論点リストを繰り返し読んでいたため、英語力それ自体は上がっていないものの、キーワードや問題点への理解は深まっており、そのキーワードをヒントにして、「だいたいこんな感じのことが話されている」ということを掴めるようになったためだと思います。

 

さらに、会議終了後、夜中に、ホテルの先輩の部屋を訪れて、その日の会議の論点の確認をさせていただきました。おそらく、先輩は疲れていたでしょうし、迷惑かなとも思ったのですが、私はとにかく、自分にできることをやろうと思いました。

 

そうして、詳細な議事録、とまではいきませんが、各論点における両者の主張の相違点をまとめ上げることが一応できました。

 

その論点のまとめは、私が東京に戻った後で事業部長に出張報告をする際に使われ、それをもとにして、何をどこまで譲歩するかを決め、それをインドに残っていた先輩と事業部門の方につなぎ、引き続き交渉してもらい、最終的にはインドのパートナー企業と合意に至りました。

 

 

 

このときの出張で、結局私は交渉の場で一度も英語を話すことができませんでした。

 

しかし、英語が全く完璧には程遠いレベルでも、仕事において何かしら自分が役に立つ道があるということを知りました。このときのインド出張に行くまでは、英語が完璧になってからでないと海外案件なんてとてもできないと思っていましたが、そうではないと思うことができました。もちろん、英語が話せたほうが貢献できることは間違いありませんが、できなくても、いくらでもやり方次第で貢献する方法はあると知りました。

 

事前に関係資料を十分に読み込んでおけば、外国人の英語が聞き取れなくても、日本人の英語がそこそこ聞き取れれば、なんとか議論の内容は把握できることも知りました。

 

論点についての両者の相違をまとめることは、地味な作業ではありますが、本社側に今後の協議の方針を決めてもらうためにとても大事なものであること知りました。

 

 

 

この出張での経験から、私は、全部で勝てたほうがもちろんよいが、仮に全部で勝てそうにない場合でも、一部で勝とうとする姿勢をなくしてはいけない、と思うようになりました。

 

仕事は、何かしら難しい問題が含まれていることが多々あります。自分の能力を超えているものもあるでしょう。しかし、だからといって、「何もできない」ということは少ないのではないでしょうか。どんな状況でも、自分にできることは何か?と考え取り組むことは、次につながる働き方であるように思います。

 

インドの案件に誘ってもらった時も、インド出張を無理やりアレンジしてもらった時も、「有難迷惑」としか思えませんでしたが、いまでは、本当によい経験になったと思えます。

 

また、「やれることを探してやれ」という先輩の言葉も、忘れられないものとなりました。

 

あの時の経験がなかったら、今頃自分はどうなっていたのだろう?と思うと、ぞっとします。いつまでも、「自分は英語ができないんで・・・」と言いながら、海外案件から逃げまわっていたかもしれないからです。

 

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