EPC契約におけるコストオーバーランの原因と対策⑥ 設計前に工事完成までの費用を見積もらなければならないこと

      2017/06/03

コストオーバーランの主たる原因と対策

 

原因:

設計前に工事完成までの費用を見積もらなければならないこと

 

大規模工事案件においては、客先であるオーナーから仕様書を提供され、請負人であるコントラクターはそれに基づいて見積もりをします。その見積もりには、主に以下の費用が含まれることになるでしょう。

 

①   設計費用

②   機器製作費用

③   工事費用

 

ここで、何度も請け負ったことがある案件であれば、設計をする前の段階でも、上記の費用が具体的にどれだけ発生するのかをほぼ正確に見積もることができるでしょう。

 

しかし、初めての案件である場合には、設計をする前の段階では、具体的に機器製作および工事において、どれだけの費用が実際に発生するのかを見積もることは難しいことが多いと思います。

 

例えば、設計前の段階では、機器を製造するためにどれだけの材料が必要になるのか、工事のためには、配管やセメント等の物量がどれだけ必要になるのかを予想できない場合があるでしょう。

 

そのため、初めての案件、または未だ経験が浅い案件においては、上記の①~③の全てについて正確に見積もることができないにも関わらず、オーナーから設計~工事完成までの全工程を含んだ形での価格を見積もるように求められると、非常に精度の低い見積もりになってしまう危険があります。

 

そして、そのまま契約締結時に一括して契約金額を合意させられてしまうと、コストオーバーランに陥るリスクは高まります。

 

というのも、この場合、契約締結後にコントラクターの想定を超えるような材料や物量が必要になった場合でも、その分の費用を追加でオーナーに請求することができないからです。

 

対策:

案1:余裕を持ったコンティンジェンシー・フィーを契約金額中に含ませる。

 

メリット:最終的にコストが当初の見積もり内で収まった場合には、コンティンジェンシー分として積んでいた分がそっくりコントラクターの利益になる。

 

もしも契約締結時に想定していた費用を若干超える金額の費用が発生しても、コンティンジェンシー分として積んでいた部分で賄うことができれば、赤字案件にならずに済む。

 

問題点:しかし、これでは、契約金額が他社よりも高くなる可能性が高く、競争入札で勝てない可能性が高い。

 

 

案2:契約締結時点では、設計費用についてだけ固定金額とする。そして、機器製作分および工事分については、上限付き変動金額とする。

 

その上で、設計完了時に機器製作分および工事分について、完了した設計に基づいて再度価格を見積もり直し、機器製作開始前に、上記の上限付き変動金額分を固定金額とする。

 

この時、もしも設計完了時に見積もりし直して算出された最終価格が、変動金額の上限値を下回った場合には、その差額をオーナーとコントラクター間で事前に合意した比率で案分することとする。

 

一方で、もしも設計完了後に再度見積もった結果の価格が変動金額の上限値を上回る金額が必要になっても、コントラクターは上限値までしかオーナーに対して対価として請求できない(上限を超える分はコントラクターが負担する)。

 

契約締結時 設計完了時
設計の

対価

固定価格 固定価格
機器製作の

対価

(i)

上限付き変動価格

Fix価格に変更

(Fix価格が(i)の上限値を下回った場合には、その差額を客先と按分する。

但し、Fix価格が(i)の上限値を超えたら、その超過金額は全額自社負担。)

工事の対価 (ii)

上限付き変動価格

Fix価格に変更

(Fix価格が(ii)の上限値を下回った場合には、その差額を客先と按分する。

但し、Fix価格が(ii)の上限を超えたら超過金額は全額自社負担。)

 

メリット:これによれば、自社は設計開始段階では正確に見積もることができない機器製作や工事分について、設計完了時点でFix化できるので、大幅なコストオーバーランに陥るリスクを減少させることができる。

 

一方で、設計完了後に再度見積もった機器製作および工事分の金額が上限金額よりも下回れば、その差額分を自社が得ることができるので、自社には、機器製作費用および工事費用をなるべく抑えようというインセンティブが働く。そして、仮に設計完了後の再度の見積もりの結果、上限金額を超えても、客先は上限までしか支払わなくてよいので、客先にとっても価格がどこまでも上昇するという懸念はない。

 

問題点:客先があくまで契約締結時に全額Fixを求める場合、入札した瞬間に、客先から話にならないといわれてあっさり失注となりえる。

 

*上記問題点をできるだけ改善する案

詳細設計後にFix化する部分(契約締結時に上限付き変動価格とする部分)を、機器製作分および工事分全てとするのではなく、機器製作分および工事分の中で、ここは詳細設計が完了しない限り本当に正確な見積もりは困難で、かつ、ここの点の見積もりの誤りは、相当な金額の上昇になりえる」と思われる部分を特定し、そこについてのみ上限付き変動価格として提案し、残りは契約締結時にFix価格とする

 

契約締結時 設計完了時
設計の対価 Fix価格 Fix価格
機器製作の対価 設計前に見積もることができる分の対価  

Fix価格

 

Fix価格

設計前に見積もることが困難な分の対価  

上限付き変動価格(i)

 

Fix価格

(Fix価格が(i)の上限値を下回った場合には、その差額を客先と按分する。但し、Fix価格が(i)の上限値を超えたら超過金額は全額自社負担。)

工事の対価 設計前に見積もることができる分の対価  

Fix価格

 

Fix価格

設計前に見積もることが困難な分の対価  

上限付き変動価格

(ii)

 

Fix価格

(Fix価格が(ii)の上限値を下回った場合には、その差額を客先と按分する。但し、Fix価格が(ii)の上限値を超えたら超過金額は全額自社負担。)

 

このようにすれば、客先も自社に受注させた場合の最終的な契約金額の見込みを付けやすくなる

 

 

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