敵対的買収とは、誰にとって敵対的なのか?

   

一昔前、敵対的買収という言葉が異様にはやりました。

 

当時まだ学生だった私は、「敵対的」という言葉の放つ攻撃的なイメージから、「敵対的買収は悪だ」と直感的に思っていました。

 

しかし、その後会社に入り、企業法務として仕事をしていく中で、「敵対的買収というのは、一体誰にとって敵対的なのか?」という疑問を持ちました。

 

今回は、「敵対的買収とは、一体誰にとって敵対的なのか?」という点について考えてみたいと思います。

 

 

敵対的買収の定義

 

「敵対的買収とは?」とwebで検索してみると、概ね、次のような説明があります。

 

買収する側が、対象とする会社の取締役会の同意を得ずに買収を仕掛けること。

 

つまり、「会社の取締役会が同意していないのに、無理やり買収しようとすること」から、「敵対的」という言葉が使われていることがわかります。

 

ということは、取締役会が同意している場合には、敵対的買収ではないわけです。

 

 

株主が変わることはマイナスか?

 

ここで思うのは、そもそも、上場会社であれば、株主は日々刻々と変わっていることです。

 

しかし、だからと言って、会社の事業に大きな影響が出ることはまずありません。

 

というより、小さな影響も出ていないように思います。

 

株主が変わったところで、その会社が持っている技術力や営業力といった実質的な中身、その会社の力は、何も変わりません。

 

これは、敵対的買収の場合も同じではないでしょうか?

 

この点、取締役会を構成する取締役にしてみれば、敵対的買収は確かに恐怖でしょう。

 

なぜなら、買収されて過半数の株式を取られれば、もしかすると、取締役を交代させられるかもしれないからです。

 

いや、かなりの確率で、取締役は交代となるでしょう。

 

「せっかくその会社の取締役にまで上り詰めたのに、あっさり交代させられたらたまらない!」

 

ということから、取締役会を構成する取締役は、普通は買収されたくないと考えるはずです。

 

つまり、敵対的買収とは、「その対象となる会社の取締役にとって嫌なこと、避けたいこと」ということです。

 

しかし、株主が変わり、その株主が取締役をがらりと変えた方が、その会社で働く従業員にとってはよいこともあるでしょう。

 

例えば、潤沢な資金を持っている株主が、多額の投資をしてくれるかもしれません。それによって、買収される前よりも仕事にやりがいが生じ、経営がうまくいき、その結果、給料が増え、生活が豊かになる、ということもあるかもしれません。

 

買収後に経営陣を刷新してくれたおかげで、風通しの良い会社になり、職場環境がよくなるかもしれません。

 

 

買収される会社は負けか?

 

一般に、敵対的買収に限らず、買収と聞くと、買われる会社は、何やら負けたかのようなイメージがあります。

 

しかし、買収されるということは、「買いたい」という人や会社がいるから買われるのです。

 

今後利益を出す見込みがある、と客観的に思われているから、求められるのです。

 

決して買収されないように!

 

買収されるのは情けない・・・。

 

そんな風に思う必要はないのではないでしょうか?

 

求められるということは、それだけ価値があるということ、認められているということです。

 

自分たちを求めてくれる人や会社のもとで働くというのも、一概に悪いことだとは言えないと思います。

 

その意味で、敵対的買収という名前は、ミスネーミングだと思います。

 

なぜなら、会社は経営陣のものではなく、従業員のものであるはずで、そうであるなら、買収が敵対的か否かも、従業員の目線でとらえられるべきもののはずですから。

 

 - 20代・30代の仕事の仕方