試験・検収に関する条文はこんなに重要! 売買・製造物供給契約の検討方法⑤

      2017/03/06

 

今回は、製品が買主の指定する場所に到達してから行われる試験・検収の段階についてお話ししたいと思います。

 

 

試験・検収段階の重要性

 

契約書に定められている製品の試験についての条文について、普段どれだけ真剣に読まれているでしょうか?

 

中には、この試験を扱う条文に、「なんか地味な条文」というイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか。

 

確かに、この試験絡みの条文は、単に試験の手続きが定められているだけで、チェックするべきポイントはないようにも思えるかもしれません。

 

それに、製品の試験は軽くパスされるのが当然でしょうし、さらには、売主の義務としては、製品を作って出荷するまでは色々と自分たちが注意して行うべき作業があるが、出荷後、それも買主の指定する場所に製品が運ばれた後は、もう売主の手を完全に離れている、といったことからも、売主にとってはこの試験の条文はあまり重要な条文には思えないかもしれません。

 

しかし、この試験に関する条文は、非常に重要だと私は思います。

 

そこで、まずは、試験に合格した場合と不合格の場合を比較することで、試験の重要性を見ていきたいと思います。

 

 

試験に合格した場合の効果

 

製品の試験に合格した場合、その効果はどのようなものがあるでしょうか?

 

まず、対価の支払いが、この試験合格によって行われる仕組みになっていることが多いと思います。

 

具体的には、試験合格後に全額支払われるとされている場合や、出荷時にある一定の割合分だけ支払われ、残りの金額は試験合格後に支払われる、という契約もあると思います。

 

次に、製品の保証期間が試験合格時から起算されることになっている契約も多いでしょう。つまり、保証期間が2年とされている場合、試験合格時から2年間が保証期間ということになります。この期間内に瑕疵が発見された場合、売主は無償で瑕疵の修理・交換をしなければなりません。

 

そして、この試験合格時を危険の移転時期とする契約もあると思います。

 

この点、インコタームズでFOBCIF等を使った場合には、製品は輸出する港で船に製品を積み込む際、つまり船の欄干を超えたときに危険が移転することになります。

 

しかし、インコタームズを使わない、あるいは、使っても、危険については別途当事者間で試験の合格時点と定める場合もあるでしょう。そのような場合には、試験に合格するまで、製品の危険は売主にあることになります。

 

さらに、納期を試験合格時と定める契約もあるでしょう。

 

この点、輸出する港で船の欄干を超えた時点を納期とする場合もあると思います。

 

しかし、納期は買主が製品を使うことができるようになった時点とするべきだとして、試験合格時を納期とする契約もあります。

 

上記から、契約によっては、

 

  • 対価の支払い

 

  • 保証期間の開始時期

 

  • 危険の移転時期

 

  • 納期に間に合ったこと

 

試験合格の効果となることになります。

 

一方、試験に合格しない場合

 

  • 対価の全部または一部が支払われない

 

  • 保証期間が開始されない

 

  • 危険が売主に残ったまま

 

  • 納期に間に合わず、納期遅延の責任を売主は取らされ得る

 

  • さらに、試験に合格しない場合には、合格するまで売主の費用で製品を修理・交換し続けなければならない

 

・・・といった状況になるわけです。

 

このように、試験に合格するかしないかは、売主にとっては真逆、そして雲泥の差となるわけです。

 

「といっても、既に製品を出荷し、買主の指定する場所まで届けたのだから、その後売主は、試験の結果を座して待つだけで、この段階で売主が何かやるべきことはないのではないか?つまり、試験についての条文についても、買主が粛々と試験をすることが定められていれば、他に何か特別に注意しなければいけない条文はないのではないか?」

 

と思う方もいると思います。

 

しかし、そうではありません。

 

もちろん、既に製品を製造して出荷した後なので、製品についてどうこうすることはできません。

 

では、何に気を付けるべきか?

 

それは、「本来、速やかに試験が実施され、その結果合格しているはずの製品が、買主の落ち度や不手際で合格していないことになってしまうことを防ぐ仕組みになっているのか?」という点です。

 

具体的には、次のような事項です。

 

  • 売主と買主のどちらが試験をするのか

 

  • 試験が行われる時期はいつか

 

  • 試験が行われる方法はどのようなものか

 

  • 試験の合否基準は何か

 

  • 試験での立会の有無

 

  • 試験に合格しなかった場合の買主から売主への通知義務とその内容

 

  • 試験で一度不合格とされ、その後売主が調査した結果、それは買主の試験の仕方等に問題があっただけで、製品にはなんら問題がなかったことが明らかになった場合の扱い

 

以下、一つ一つ、具体的に見ていきます。

 

売主と買主のどちらが試験をするのかについて

 

そもそも、どっちがするのか?という問題があります。

 

売主がする場合、おそらく、買主は試験に立ち会うことになるでしょう。

 

もしも売主が試験をする場合、その試験のために必要な物(燃料や性能を測定する機材等)を準備しなければなりませんが、その費用も売主が負担することになっているかもしれません。その場合、その費用も契約金額に入れておかないといけないですよね。

 

一方、買主が試験を行う場合には、売主が試験に立ち会うのかという問題もあります。

 

この辺りが契約書にちゃんと定められているかをチェックする必要があります。

 

 

試験が行われる時期について

 

試験は、行われるならいつ行われても良い、というものではないですよね。

 

特に、買主が試験を行うという場合には、買主の都合でズルズルと試験の実施が遅れると、それに伴い、試験合格の効果である対価の支払い、保証期間の開始、危険の移転等が生じる時期も遅れていきます。

 

よって、試験時期を明確に定め、売主以外の理由で一定の期間経過後も試験が行われない場合には、試験は合格したものとみなす、という定め(みなし規定)を入れるべきでしょう。

 

 

試験が行われる方法・条件について

 

製品によっては、試験のやり方・条件がわずかに違うだけでその結果が大きく違ってくるものもあることと思います。

 

そのため、試験の方法は、契約書に添付される仕様書に売主が納得する方法を明確に定めておく必要があります。

 

試験の方法があいまいだと、「売主の考えていた方法での試験でなら合格するけど、買主のやり方だと不合格になる」といったことが起きかねません。

 

 

試験の合否基準について

 

試験の合格基準は、具体的に何についてどのような数値が出れば合格となるのかを明確に仕様書に定められているか確認しましょう。合格基準があいまいで客観性がないものだと、合否判定も売主と買主とで異なるものになってしまいかねません。その結果、試験に不合格、となってしまう場合もあるかもしれません。

 

 

試験に合格しなかった場合の買主から売主への通知義務とその内容について

 

買主が試験をした結果、不合格だということになったとします。

 

その後、売主としては、速やかに不合格の通知を出してもらいたいところです。そうすれば、売主も速やかに修理等の対応をとることができます。

 

また、試験結果の詳細なデータを見ないと、製品にいかなる問題があったのかを、売主は正確に理解できないこともあるでしょう。

 

そこで、そのような試験結果のデータも、買主から売主に提出してもらえるように契約書に定めておくべきです。

 

 

試験で一度不合格とされ、その後売主が調査した結果、それは買主の試験の仕方等に問題があっただけで、製品にはなんら問題がなかったことが明らかになった場合の扱いについて

 

買主が試験を行った結果、不合格と判断されたものの、それは、その後売主が製品を調査した結果、買主が契約に定められている通りに試験をしなかったことが原因であるとわかったとします。

 

とすると、製品を買主から売主に送り返した費用、その後製品を再度買主に送付する費用、さらには売主による製品の調査費用は、買主が負担するべきですよね。

 

この点も明記しておかないと、買主は支払い請求にすんなりと応じてくれないこともありえます。

 

 

上記の点をチェックすることで、「本来、試験に合格していたはずなのに、不合格となった」とか、「不合格になった理由がよくわからないまま製品を交換しなければならなくなった」といった事態に陥ることを防ぐことができるでしょう。

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