英文契約書において「~の範囲で」「~である限り」という場合に使われる表現

      2020/01/23

 

 

今回は、「~の範囲で」「~である限り」という表現についてご紹介したいと思います。

 

この「~の範囲で」「~である限り」という表現も、英文契約書の中ではよく出てきます。

 

具体的にどのような場合にこの表現が使われるのかといいますと、義務や権利の範囲を限定する、または設定するときです。

 

契約書を自分で作る、または、相手方から送付されてきた契約書を読むとき、次のようなことを考えることが多いと思います。

 

「できるだけ、自分の会社に有利になるようにしたい。不利な状況を改善したい。」

 

ここで、契約書を自社に有利になるようにする、または、不利な状況を改善する方法としては、次のようなものが考えられます。

 

自社の義務の範囲を狭める。

 

相手の権利の内容を狭める。

 

自社の権利を、無条件では認めてもらえないかもしれないが、ある一定の範囲に限定して定める。

 

相手に、ある一定の範囲で義務を課す。

 

このような、「範囲を狭める」、または、「一定の範囲を設ける」際に、「~の範囲で」、または「~である限り」といった表現が使われることになります。

 

以下に具体例を挙げます。

 

The Seller is entitled to use the Confidential Information disclosed by the Purchaser.

訳:売主は、買主から開示された秘密情報を使うことができる。

 

この条文のままだと、売主は、買主から開示された秘密情報を無制限に使ってよいことになってしまいます。これは、買主からしてみると、本意ではないと思います。

 

そこで、to the extentという表現を使って、売主が秘密情報を使うことができる範囲を狭めてみます。

 

The Seller is entitled to use the Confidential Information disclosed by the Purchaser to the extent necessary for the Seller to perform its obligation hereunder.

訳:売主は、買主から開示された秘密情報を本契約の自己の義務を履行するために必要な範囲で、使うことができる。

 

このように、to the extent~を加えることで、売主が買主の秘密情報を使うことができる範囲を、あくまで、「本契約の売主の義務を果たすために必要な範囲」に限定することができます。

 

二つ目の例文を以下に挙げます。

 

The Receiving Party is entitled to disclose the Confidential Information disclosed by the Disclosing Party to its subsidiary company.

訳:受領当事者は、秘密情報を、その子会社に対して開示することができる。

 

この条文のままだと、受領当事者は、開示当事者から開示された秘密情報を、無制限に、その子会社に開示できることになってしまいます。これはおそらく、開示当事者の本意ではないでしょう。

 

そこで、to the extentを使って、以下のような文を加えてみます。

 

The Receiving Party is entitled to disclose the Confidential Information to its subsidiary company to the extent necessary for the Receiving Party to implement the purpose set forth in the Article X hereof.

訳:受領当事者は、開示当事者から開示された秘密情報を、受領当事者が本契約の第X条に定められた目的を遂行するために必要な範囲で、子会社に対して開示することができる。

 

このように、どんな子会社に対しても開示してよいのではなく、本契約の第X条に定められた目的を果たすため必要な範囲の子会社というように、開示の範囲を限定しました。

 

このように、to the extent~という表現を使うことで、範囲を設定したり、狭めたりすることができます。

ちょっと一息 コラム集~お昼休みや休憩時間にお読みください~

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道を変えることは負けではない 優秀な人が成長できなくなる理由 悪を知らねば勝利は覚束ない

 

目次
第1回 義務 第10回 ~に関する 第19回 知らせる
第2回 権利 第11回 ~の場合 第20回 責任
第3回 禁止 第12回 ~の範囲で、~である限り 第21回 違反する
第4回 ~に定められている、~に記載されている 第13回 契約を締結する  

第22回 償還する

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) 第14回 契約締結日と契約発効日 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)
第6回 ~に従って 第15回 事前の文書による合意 第24回 故意・重過失
第7回 ~に関わらず 第16回 ~を含むが、これに限らない 第25回 救済
第8回 ~でない限り、~を除いて 第17回 費用の負担 第26回 差止
第9回 provide 第18回 努力する義務 第27回 otherwise

 

 

第28回 契約の終了

第38回 権利を侵害する 第48回 遅延利息
 

第29回 何かを相手に渡す、与える

第39回 保証する 第49回 重大な違反
 

第30回 due

第40回 品質を保証する 第50回 ex-が付く表現
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 第41回 補償・品質保証 第51回 添付資料
第32回 ~を被る 第42回 排他的な 第52回 連帯責任
第33回 ~を履行する 第43回 第53回 ~を代理して
第34回 果たす、満たす、達成する 第44回 第54回 下記の・上記の
第35回 累積責任 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している 第55回 強制執行力
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 第46回 証明責任 第56回 in no event
第37回 補償・免責 第47回 indemnifyとliableの違い 第57回 for the avoidance of
 
第58回 無効な
第59回 whereについて
第60回 in which event, in which case
第61回 株主総会関係
第62回 取締役・取締役会関係

 

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。

 

 - 英文契約の基本的な表現の習得