英文契約の基本的な表現 第45回 売買・請負契約の保証に関する条文における「瑕疵がない」「仕様書に合致している」という表現

      2017/06/21

40回で、「品質の保証」という意味を表す表現として、warrantyをご紹介しました。

 

このwarranty(または動詞であるwarrant)は、売買契約や請負契約等で、「瑕疵担保責任」または「保証」といったタイトルの条文の中でよく使われます。

 

具体的には、以下のような条文です。

 

「売主は、本製品が、その引渡時点で、仕様書に合致すること、および、本製品に設計、材料、および技量について何ら瑕疵がないこと保証する。」

 

これは、「瑕疵担保責任」「保証」の条文の典型例です。

 

つまり、

    仕様書に合致すること

    瑕疵がないこと

2点を定めます。

 

今回は、この2点を表す表現としてよく使われるものをご紹介します。

 

 

仕様書に合致すること

 

「仕様書」は、specificationsです。「スペック」と呼ばれることも多いです。

 

このスペックには、売主が買主に提供する製品が満たすべき基準が事細かに定められています。売主は、このスペックに適合した製品を製造して買主に納めなければなりません。

 

この表現で注意していただきたいのは、通常、specificationsというように「複数形」で使われるということです。

 

次に、「合致する」は、色々な表現があり得ますが、瑕疵担保保証の条文でもっともよく使われるのは、「conform to」でしょう。

 

つまり、「製品が仕様書に合致する」は、

the Product shall conform to the Specifications.

と書きます。

 

conform toに次いでよく見るのは、「comply with」という表現です。

 

complyの名詞形は、「compliance」です。

 

読みは、「コンプライアンス」。おそらく多くの方が聞いたことがある言葉ですよね?

 

そう。法律を守る、法令順守という意味で使われています。

 

つまり、comply withは、「~に従う」という意味です。

 

そのため、

The Product shall comply with the Specifications.

と書けば、「本製品は仕様書に合致していなければならない」という意味になります。

 

ところで、時々、in all respects(「あらゆる点で」という意味)という表現が上記の条文に挿入されている契約書も見かけます。

 

つまり、

The Product shall conform in all respects to the Specifications.

とか、

The Product shall comply in all respects with the Specifications.

といった形で定められていることがあります。

 

しかし、このin all respectsという表現は必ず入れなければならない表現だとは思えません。これは仕様への合致を強調しているだけで、この表現がないからといって、売主の「仕様書に合致させなければならない義務」が薄れ、多少仕様書からずれていても許容される、ということになりません。そんなことを言い出したら、「~をしなければならない」という条文には、常に、in all respectsを入れなければならなくなってしまいます。

 

したがって、

The Product shall conform to the Specifications.

The Products shall comply with the Specifications.

で製品の仕様書への合致を十分に保証することになります。

 

瑕疵がないこと

 

「瑕疵」は、defectと書きます。

 

そして「瑕疵」がないことを表す表現は少し特殊で、次のように書きます。

 

be free from defects in…

 

freeというと、「自由」という意味を真っ先に思い浮かべると思います。

 

自由であるということは、つまり、解放されている、ということです。

 

つまり、瑕疵から解放されている瑕疵がない、という感じで覚えられるのではないでしょうか。

 

この点、なんとなく、「瑕疵」がない=「製品が瑕疵を持たない」とイメージして、

 

the Product doesn’t have defectsとか、there are not defects…などという表現かな?と思ってしまう方もいらっしゃることでしょう。

 

上記のような英文でも、意味が通じないわけではないので、ダメではないと思います。つまり、法的な拘束力はちゃんと認められると思います。

 

実際、上記のようなdoesn’t havethere is構文で定められている条文も見たことがあります。

 

しかし、「瑕疵がない」と定める条文の中で圧倒的に使われているのは、「be free from」という表現ですので、ぜひこの表現は覚えておいていただければと思います。

 

そして、このbe free from defectsという表現で注意したいのは、defectsの後に続く記載です。

 

ここには、「設計、材料、および技量」という表現が入ります。

 

つまり、

The Product shall be free from defects in design, materials and workmanship.

となります。

 

defectsの後ろには、inがくること(of ではない)、そして、設計、材料、および技量という3つが来ることに注意してください。

 

これによって、「設計、材料、そして技量に瑕疵がないこと」を保証することになります。

 

ときどき、自社が買主になる場合の売買契約で、売主がドラフトした契約書中に、defectsの後に「design」が定められていない保証の条文を見ることがあります。

 

これは、「設計上の瑕疵は責任を負いません」といっているようなものです。

 

製品は、まず設計し、その設計に基づき、適切な材料と製造技術(技量)を用いて製造することによって完成します。そのため、製造にかかる全工程である設計、材料、そして技量に瑕疵がないことを保証してもらうべきです。

 

以上から、売買契約や請負契約における保証の条文でよく使われる条文は、次にようになります。

 

The Seller warrants that, at the time of delivery, the Products (i) shall conform to the Specifications and (ii) shall be free from defects in design, materials and workmanship.

 

訳:

売主は、本製品がその引き渡し時点で(1)仕様書に合致していること、および(2)設計、材料、および技量について瑕疵がないことを保証する。

 

 

なお、上記で、「at the time of delivery」という句を挿入しているのは、瑕疵が無い旨の保証は、あくまで、「引き渡し時点」の瑕疵を問題にしている点を明記するためです。

つまり、売主が責任を負う瑕疵は、あくまで、引き渡し時点ですでに製品に存在はしているものの、未だ発見されていないものであって、引き渡し後に新たに生じたものではないのです。

 

このat the time of deliveryが明記されていない契約書も時々見かけますが、明記しておいた方がよいでしょう。

目次

第1回 義務

第2回 権利

第3回 禁止

第4回 ~に定められている、~に記載されている

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足)

第6回 ~に従って

第7回 ~に関わらず

第8回 ~でない限り、~を除いて

第9回 provide

第10回 ~に関する

第11回 ~の場合

第12回 ~の範囲で、~である限り

第13回 契約を締結する

第14回 契約締結日と契約発効日

第15回 事前の文書による合意

第16回 ~を含むが、これに限らない

第17回 費用の負担

第18回 努力する義務

第19回 知らせる

第20回 責任

第21回 違反する

第22回 償還する

第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)

第24回 故意・重過失

第25回 救済

第26回 差止

第27回 otherwise

第28回 契約の終了

第29回 何かを相手に渡す、与える

第30回 due

英文契約書の基本的な表現 第31回 英文契約書における「瑕疵(defect)」が発見された場合の救済方法の表現

英文契約の基本的な表現 第32回 「~を被る」という表現

英文契約書の基本的な表現 第33回 「~を履行する」

英文契約の基本的な表現 第34回 果たす、満たす、達成する

英文契約の基本的な表現 第35回 累積責任

英文契約の基本的な表現 第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害についての表現

英文契約の基本的な表現 第37回 補償する・免責する

英文契約の基本的な表現 第38回 権利を侵害する

英文契約の基本的な表現 第39回 保証する (guarantee)

英文契約の基本的な表現 第40回 品質を保証する(warranty)

英文契約の基本的な表現 第41回 補償・保証債務の負担・品質の保証の表現のまとめ

英文契約の基本的な表現 第42回 「排他的な」という表現 その1

第43回 「排他的な」を表す表現 その2 他社と組まない

第44回 「排他的な」を表す表現 その3 唯一の責任・救済

英文契約の基本的な表現 第45回 売買・請負契約の保証に関する条文における「瑕疵がない」「仕様書に合致している」という表現

英文契約の基本的な表現 第46回 証明責任

 

 

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