実務で必要なスキルを24時間どこにいても学べる!

本郷塾で学ぶ英文契約

逸失利益(loss of profit)免責条項で使われる様々な損害

2024/01/13
 

▶4/30(火)まで、今年の春から企業法務部で働くことになった方や企業法務部の若手の方々に向けて、本郷塾にて単体でご提供している英文契約の講座から、秘密保持契約や売買契約など、企業法務部ならどなたでもかかわることになると思われる9つの講座(講義時間は合計約37時間)をお得なセット割でご提供いたします。詳しくは、こちらをご覧ください。

英文契約基礎から実践講座

この記事を書いている人 - WRITER -
英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
詳しいプロフィールはこちら

英文契約書には、責任制限条項が定められているものがあります。

 

責任制限条項とは、契約に違反した当事者が、相手方に対して負う責任を制限する条文を指します。

 

責任制限条項には、大きくは2つあります。

 

一つは、第35回でご紹介した「累積責任の上限を設ける条文」です。

 

もう一つは、「逸失利益等の免責」を定める条文です。

 

今回は、この逸失利益の免責を定める条文でよく使われる「様々な損害」についての表現をご紹介したいと思います。

 

逸失利益の免責条項で使われる損害を表す用語

 

以下は、逸失利益の免責条項の例です。

 

「本契約の如何なる定めにも関わらず、売主は、間接損害、付随的損害、結果的損害、特別損害、逸失利益に関して、買主に対して賠償する責任を負わないものとする。」

 

この条文中には、間接損害、付随的損害、結果的損害、特別損害、そして逸失利益という5つの損害が列挙されています。

 

この条文は何を言おうとしているのかと言いますと、要は、「通常損害以外は賠償しなくてよい」ということです。

 

ここで「通常損害(general damages)」とは、「契約の不履行により通常発生するであろうと思われる損害」を指します。これは「直接的損害(direct damages)」とも言います。

 

一方、「特別損害」とは、契約の不履行によって通常生じることが予見できない特別の事情によって生じる損害を指します。「特別損害」は、「特別な損害」ではなくて、「特別な事情によって生じる損害」であることに注意しましょう。

そしてこの特別損害は、間接損害や結果的損害とも言います。この中には、本来契約が適切に履行されていれば得られたであろう利益=「逸失利益」も含まれます。

 

それなら、上記の条文のように、ズラズラと似たような表現を並べなくてもよいのではないか、つまり、「特別損害」を賠償しなくてよい、と書けばそれで足りるように思います。

 

実際、そのような簡略化された条文が契約書に定められていた契約書をいくつも見たことがあります。

 

ただ、傾向としては、契約金額の大きな契約ほど、この逸失利益の免責条項をしっかりと書いています。つまり、「間接損害」、「特別損害」、「結果的損害」、「逸失利益」を並べて書いています。


 

一方、単に「間接損害を免責する」という定め方がなされているのは、契約金額が比較的小さな契約でした。M&A契約や、大規模なプラント建設案件で、そのような簡略化した形で定められていた条文はまずなかったように思います。

 

この理由は、おそらく、準拠法によっては、間接損害、特別損害、結果的損害、逸失利益という表現の間に何らかの意味の違いがある可能性も否定できないことから、念には念を入れて、大きな案件ほど、網羅的に列挙しようということになっているのではないかと思います。

 

ちなみに、「付随的損害」は、間接損害、特別損害、結果的損害、逸失利益とはやや異なります。

 

付随的損害は「契約違反に対処するために必要となる費用」を指します。例えば、売買契約において売主の製品に回復できないほどの欠陥があり、その製品を買主が売主に返送する際の輸送費がこれにあたります。

 

 

様々な損害を表す表現

 

以下に、間接損害、特別損害、結果的損害、逸失利益、そして付随的損害を意味する表現を記載します。

 

間接損害

indirect damages

 

特別損害

special damages

 

結果的損害

consequential damages

 

逸失利益

loss of profit

 

付随的損害

incidental damages

 

 

最後に、上記の表現を使った逸失利益の免責条項の例を以下に示します。

 

The Seller shall in not event be liable to the Purchaser for loss of profit or for indirect, special, consequential or incidental damages that might be suffered by the Purchaser in connection with this Agreement.

【逸失利益・責任制限関係の記事は以下です!】

逸失利益免責条項で使われる様々な損害についての表現 間接損害と逸失利益の違い
責任制限条項① Limitation of Liabilityとは? 責任制限条項② 責任制限条項が適用されない場合
累積責任

 

目次
第1回 義務 第10回 ~に関する 第19回 知らせる
第2回 権利 第11回 ~の場合 第20回 責任
第3回 禁止 第12回 ~の範囲で、~である限り 第21回 違反する
第4回 ~に定められている、~に記載されている 第13回 契約を締結する  

第22回 償還する

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足) 第14回 契約締結日と契約発効日 第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)
第6回 ~に従って 第15回 事前の文書による合意 第24回 故意・重過失
第7回 ~に関わらず 第16回 ~を含むが、これに限らない 第25回 救済
第8回 ~でない限り、~を除いて 第17回 費用の負担 第26回 差止
第9回 provide 第18回 努力する義務 第27回 otherwise

 

 

第28回 契約の終了

第38回 権利を侵害する 第48回 遅延利息
 

第29回 何かを相手に渡す、与える

第39回 保証する 第49回 重大な違反
 

第30回 due

第40回 品質を保証する 第50回 ex-が付く表現
第31回 瑕疵が発見された場合の対応 第41回 補償・品質保証 第51回 添付資料
第32回 ~を被る 第42回 排他的な 第52回 連帯責任
第33回 ~を履行する 第43回 第53回 ~を代理して
第34回 果たす、満たす、達成する 第44回 第54回 下記の・上記の
第35回 累積責任 第45回 瑕疵がない、仕様書に合致している 第55回 強制執行力
第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害を表す表現 第46回 証明責任 第56回 in no event
第37回 補償・免責 第47回 indemnifyとliableの違い 第57回 for the avoidance of
 
第58回 無効な 第68回 representations and warranties
第59回 whereについて 第69回 material adverse effect
第60回 in which event, in which case 第70回 to the knowledge of
第61回 株主総会関係 第71回 GAAP
第62回 取締役・取締役会関係 第72回 covenants
第63回 indemnifyとdefendの違い
第64回 Notwithstandingと責任制限条項
第65回 M&Aの全体の流れ
第66回 conditions precedent
第67回 adjustment

【私が勉強した参考書】

基本的な表現を身につけるにはもってこいです。

ライティングの際にどの表現を使えばよいか迷ったらこれを見れば解決すると思います。

アメリカ法を留学せずにしっかりと身につけたい人向けです。契約書とどのように関係するかも記載されていて、この1冊をマスターすればかなり実力がupします。 英文契約書のドラフト技術についてこの本ほど詳しく書かれた日本語の本は他にありません。 アメリカ法における損害賠償やリスクの負担などの契約の重要事項についての解説がとてもわかりやすいです。

 

 

 

 

この記事を書いている人 - WRITER -
英文契約・契約英語の社内研修をオンラインで提供しています。本郷塾の代表本郷貴裕です。 これまで、英文契約に関する参考書を6冊出版しております。 専門は海外建設契約・EPC契約です。 英文契約の社内研修をご希望の方は、お問合せからご連絡ください。
詳しいプロフィールはこちら

- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

Copyright© 本郷塾で学ぶ英文契約 , 2017 All Rights Reserved.