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英文契約の基本的な表現 第35回 累積責任

      2018/11/23

累積責任という表現が英文契約書中で使われる場面

 

累積責任」という言葉は、これまで契約書を検討する仕事に関わったことがない人には馴染みがないものなのではないでしょうか。

 

おそらく、学生時代に法律を専攻していた人にとっても、あまり聞いたことがない言葉だと思います。

 

累積責任とは、契約を締結した当事者がその契約に関して負うことになる全部の責任を足し合わせたもの、を指します。

 

売買契約で言えば、売主が納期に遅れた責任保証性能を出せなかった場合の責任瑕疵があった場合の責任等の合計を累積責任と言います。責任を積み重ねたもの、というイメージを持っていただければと思います。

 

そして、契約書には、この累積責任に上限を設けている条文が定められている場合があります。

 

いわゆる、責任制限条項と呼ばれるものです。

 

この責任制限条項には、相手方当事者が被った逸失利益の喪失などについて責任を負わなくてもよいとする逸失利益の免責条項と、上記の累積責任に上限を設けるものが主なものとしてあります。

 

 

損害賠償に関する民法の原則からみた累積責任の上限

 

おそらく、特に大学で法律を学んだ方にとっては、この責任制限条項は、新鮮な、そして意外なものなのではないでしょうか。

 

というのも、民法では、契約相手が被った損害は、相当な因果関係があるのであれば、全て契約に違反した当事者が賠償しなければならない、というのが原則的な扱いであるからです。

 

そしてその原則は、合理的なものでもあります。

 

契約に違反して相手方に損害を与えた当事者がその損害を全部賠償する、というのは、何ら不公平なものでもなく、当然と言えば当然です。

 

しかし、この責任制限条項は、例え契約に違反したとしても、その当事者が責任を負う範囲を狭めよう、というものなのです。

 

これは特に、売買契約や請負契約で製品を納入する側、つまり、売主や請負人に有利な条項であるといえるでしょう。

 

もっとも、この責任制限条項が、あらゆる契約書に定められているかというと、そうでもありません。

 

業界によっては、民法の原則の通り、生じた損害は相当な因果関係がある限り全て賠償する、という扱いを貫いている業界もあるようです。

 

なので、ご自分の業界で、この責任制限条項を契約書に設けることが一般的なことであるのかについては確認しておくとよいと思います。

 

なお、この累積責任に上限を設ける条文が契約書に定められていた場合でも、故意・重過失によって相手方に生じさせた損害については適用されないことになるという扱いをしている国が多いと思います。故意・重過失の当事者を保護する必要はない、という考え方からくるものでしょう。なので、この累積責任に上限を設ける条文があるからといって、「もうそれ以上責任を絶対に負わなくてよくなる!」というわけではないという点は知っておいていただければと思います。

 

累積責任という表現

 

では、この累積責任を表す英語の表現はどのようなものなのでしょうか?

 

簡単なものですと、total liabilityという表現を使っている契約書も見受けられます。

 

または、maximum liabilityという表現も時々見かけます。

 

しかし、もっともよく使われているのは、aggregate liabilityという表現です。aggregateという単語も、普通はほとんど見かけないのではないでしょうか。

 

英文契約書の中でこのaggregateが使われるのは、累積責任に上限を設ける条文にほぼ限られます。

 

よって、契約書で、totalmaximumまたはaggregateで検索をして何もヒットしなければ、その契約書には、累積責任の条文が定められていない、と判断してよいと思います。その場合、追記するべきか検討することになります。

 

以下は、累積責任の上限を定める条文の例です。

 

Notwithstanding anything to the contrary set forth in this Agreement, the Seller’s aggregate liability to the Purchaser related to this Agreement shall not exceed the amount of the Contract Price hereof.

 

訳:本契約中の如何なる定めにも関わらず、売主が買主に対して負う本契約に関する累積責任は、本契約の契約金額を超えない。

 

ちなみに、累積責任の上限は、契約金額と同額とされていることが多いですが、必ずしもそうしなければいけないわけではありません。契約金額の50%でも、200%でも、当事者間の合意次第です。

 

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目次

第1回 義務

第2回 権利

第3回 禁止

第4回 ~に定められている、~に記載されている

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足)

第6回 ~に従って

第7回 ~に関わらず

第8回 ~でない限り、~を除いて

第9回 provide

第10回 ~に関する

第11回 ~の場合

第12回 ~の範囲で、~である限り

第13回 契約を締結する

第14回 契約締結日と契約発効日

第15回 事前の文書による合意

第16回 ~を含むが、これに限らない

第17回 費用の負担

第18回 努力する義務

第19回 知らせる

第20回 責任

第21回 違反する

第22回 償還する

第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)

第24回 故意・重過失

第25回 救済

第26回 差止

第27回 otherwise

第28回 契約の終了

第29回 何かを相手に渡す、与える

第30回 due

英文契約書の基本的な表現 第31回 英文契約書における「瑕疵(defect)」が発見された場合の救済方法の表現

英文契約の基本的な表現 第32回 「~を被る」という表現

英文契約書の基本的な表現 第33回 「~を履行する」

英文契約の基本的な表現 第34回 果たす、満たす、達成する

英文契約の基本的な表現 第35回 累積責任

英文契約の基本的な表現 第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害についての表現

英文契約の基本的な表現 第37回 補償する・免責する

英文契約の基本的な表現 第38回 権利を侵害する

英文契約の基本的な表現 第39回 保証する (guarantee)

英文契約の基本的な表現 第40回 品質を保証する(warranty)

英文契約の基本的な表現 第41回 補償・保証債務の負担・品質の保証の表現のまとめ

英文契約の基本的な表現 第42回 「排他的な」という表現 その1

第43回 「排他的な」を表す表現 その2 他社と組まない

第44回 「排他的な」を表す表現 その3 唯一の責任・救済

英文契約の基本的な表現 第45回 売買・請負契約の保証に関する条文における「瑕疵がない」「仕様書に合致している」という表現

英文契約の基本的な表現 第46回 証明責任

 

 

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