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英文契約の基本的な表現 第32回 「~を被る」という表現

      2018/11/23

「~を被る」という表現が使われる場面

 

今回は、「~を被る」という表現についてご紹介したいと思います。

 

「~を被る」の「~」にはどのような言葉がくるのかと言いますと、「遅れ」や「費用」や「損害」といったものが多いです。

 

英文契約は、当事者間の権利義務を定めている文書です。

 

特に義務を中心に定めています。

 

この義務に違反するとどうなるでしょうか?

 

違反をされた当事者は、自分の作業に遅れが出たり、追加費用が生じたり、損害が発生したりしますよね。

 

このとき、「遅れを被る」、「追加費用を被る」、そして「損害を被る」といいます。

 

そして、遅れ、追加費用、損害等を被った当事者は、違反をした当事者に対して、「納期延長」、「追加費用の支払い」、「損害の賠償」を求めることができる、と契約書で定められているはずです。

 

つまり、以下のような条文が契約書に定められていることが多いと言えます。

 

「当事者Aの契約違反によって、当事者Bがその作業に遅れを被ったら、当事者Bはその分納期を延長してもらえる」

 

「当事者Aの契約違反によって、当事者Bが追加費用を被ったら、当事者Bはその追加費用を負担してもらえる」

 

このように、相手方当事者が契約違反に陥った場合の扱い定める条文中に、「~を被る」という表現が使われるのです。

 

ちなみに、この「~を被る」という表現は、英文契約書に限らず、相手方当事者に対してクレームレターを書く際にもよく使われます。

 

クレームレターとは、相手方当事者が契約に従わない場合に、契約違反に陥っていること相手方に伝え、その契約違反によって自分が被った工程の遅れや追加費用の請求をするレターのことです。

 

このクレームレターの中では、「あなたは契約書の○条に違反しています。それによって私達は、工程に遅れや追加費用を被りました。よって、納期を延長し、追加費用を支払ってください」というようなことを書くことが多いです。

 

以上から、「~を被る」という表現が英文契約書やそれに関するクレームレターでよく使われるということをわかっていただけたかと思います。

 

 

「~を被る」という表現

 

では、「~を被る」とは、どのような表現を使うのでしょうか。

 

まず、「遅れ(delay)」や「損失・損害(loss、damage)」を被る場合は、sufferまたはsustainが使われます。

 

一方、「費用(expense、cost)」を被る場合は、incurが使われます。

 

この点、英和辞典を見ると、sufferincurもどちらも「~を被る」という訳が充てられており、両者が「遅れ」「損失・損害」と「費用」とで使い分けがなされているわけではないように思えます。

 

しかし、これはあくまで私の経験なのですが、以下の例文のように、英文契約書では、「遅れ」「損失・損害」suffer、「費用」はincurという使い分けがなされているものが多いです。

 

If the Contractor suffers delay and/or incurs additional cost due to a failure by the Owner to perform the Owner’s obligation under this Agreement, the Contractor is entitled to an extension of time for any such delay and a payment of any such additional cost.

 

訳:もしもコントラクターが本契約に基づくオーナーの義務の履行がなされないことによって工程の遅れを被る、または追加費用を被った場合には、コントラクターはかかる遅延分の納期の延長、および、かかる追加費用を請求することができる。

 

よって、英文契約やクレームレターにおいては、「費用」の場合は、incurを、「それ以外の何か好ましくないもの」を被る場合はsufferを使う、という使い分けをするのがよいと思います。

 

 

additional cost incurred by~とdelay suffered by~について

 

なお、このincursufferは次のような過去分詞の形でも使われます。

 

The Owner shall reimburse to the Contractor any additional cost incurred by the Contractor due to the failure of the Owner’s obligation under this Agreement.

 

訳:オーナーは、本契約に基づくオーナーの義務違反に起因してコントラクターが被った追加費用をコントラクターに対して償還しなければならない。

 

ここでは、any additional cost incurred by the Contractorとあり、「コントラクターによって被られた追加費用」=「コントラクターが被った追加費用」となります。意味を理解する際に、ここでは追加費用を被る主体がコントラクターである点にご注意ください。

 

 

The Contractor is entitled to an extension of time for any delay suffered by the Contractor due to the failure of the Owner’s obligation under this Agreement.

 

訳:コントラクターは、本契約に基づくオーナーの義務違反に起因してコントラクターが被った工程の遅延分だけ納期の延長を得ることができる。

 

ここでは、any delay suffered by the Contractorとあり、「コントラクターによって被られた遅れ」=「コントラクターが被った遅れ」となります。意味を理解する際に、ここでは遅れを被る主体がコントラクターである点にご注意ください。

 

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目次

第1回 義務

第2回 権利

第3回 禁止

第4回 ~に定められている、~に記載されている

第5回 ~に定められている、~に記載されている (補足)

第6回 ~に従って

第7回 ~に関わらず

第8回 ~でない限り、~を除いて

第9回 provide

第10回 ~に関する

第11回 ~の場合

第12回 ~の範囲で、~である限り

第13回 契約を締結する

第14回 契約締結日と契約発効日

第15回 事前の文書による合意

第16回 ~を含むが、これに限らない

第17回 費用の負担

第18回 努力する義務

第19回 知らせる

第20回 責任

第21回 違反する

第22回 償還する

第23回 予定された損害賠償額(リキダメ、LD)

第24回 故意・重過失

第25回 救済

第26回 差止

第27回 otherwise

第28回 契約の終了

第29回 何かを相手に渡す、与える

第30回 due

英文契約書の基本的な表現 第31回 英文契約書における「瑕疵(defect)」が発見された場合の救済方法の表現

英文契約の基本的な表現 第32回 「~を被る」という表現

英文契約書の基本的な表現 第33回 「~を履行する」

英文契約の基本的な表現 第34回 果たす、満たす、達成する

英文契約の基本的な表現 第35回 累積責任

英文契約の基本的な表現 第36回 逸失利益免責条項で使われる様々な損害についての表現

英文契約の基本的な表現 第37回 補償する・免責する

英文契約の基本的な表現 第38回 権利を侵害する

英文契約の基本的な表現 第39回 保証する (guarantee)

英文契約の基本的な表現 第40回 品質を保証する(warranty)

英文契約の基本的な表現 第41回 補償・保証債務の負担・品質の保証の表現のまとめ

英文契約の基本的な表現 第42回 「排他的な」という表現 その1

第43回 「排他的な」を表す表現 その2 他社と組まない

第44回 「排他的な」を表す表現 その3 唯一の責任・救済

英文契約の基本的な表現 第45回 売買・請負契約の保証に関する条文における「瑕疵がない」「仕様書に合致している」という表現

英文契約の基本的な表現 第46回 証明責任

 

 

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