英文の秘密保持契約の解説⑪ 情報開示者による差止請求

      2019/12/22

 

今回は、情報受領者が、情報開示者から受領した秘密情報を漏えいした場合の裁判所による「差止」についての条文を解説します。

 

日本語では、次のような条文です。

 

「情報受領者は、正当な権限に基づかない秘密情報の開示または使用は、情報開示者にとって金銭的な賠償では十分に補うことができない回復困難な被害となることを認識する。したがって、情報開示者は、管轄権を有する裁判所から本契約の違反および秘密情報の開示を禁止する差止命令を請求および取得する権利を有するものとする」

 

 

情報開示者による認識

 

まず、前半の部分の「情報受領者は、正当な権限に基づかない秘密情報の開示または使用は、情報開示者にとって、金銭的な賠償では十分に補うことができない回復困難な被害となることを認識する」についてみていきます。

 

主語である「情報受領者は」=the Receiving Party

 

動詞である「~を認識する」=acknowledges

 

この「~を認識する」という表現で、契約当事者が、ある事実を認識していることをこの条文で宣言していることを表しています。

 

つまり、ここは、契約当事者の権利や義務を表しているわけではありません

 

よって、shallもmayもbe entitled toも使いません

 

現在系で書きます。

 

次に、目的語に当たる「正当な権限に基づかない秘密情報の開示または使用は、情報開示者にとって、金銭的な賠償では十分な補うことができない回復困難な被害となること」の中の主語である「正当な権限に基づかない開示または使用は」についてみていきます。

 

「正当な権限に基づかない」とは、unauthorized~と書くことができます。

 

よって、「正当な権限に基づかない開示または使用」は、

the unauthorized disclosure or use of the Confidential Informationと書くことができます。

 

次に、「情報開示者にとって、金銭的な賠償では十分に補うことができない回復困難な被害となること」についてみてみます。

 

「回復困難な被害となる」=would cause irreparable damages

 

「~を引き起こす」は、causeを使います。

 

なお、ここの「would」は、「将来そうなる可能性が高い」「そうなるはずだ」という意味を表しています。

 

そして、「金銭的な賠償では十分に補うことができない」は、「金銭的な賠償では、十分な救済とはならない」と解釈し、次のように書くことができます。

 

monetary indemnity would not be an adequate remedy

 

以上をまとめると、次のようになります。

 

The Receiving Party acknowledges that the unauthorized disclosure or use the Confidential Information would cause irreparable damages for which monetary indemnity would not be an adequate remedy.

 

 

差止請求権

 

次に、後半の「したがって、情報開示者は、管轄権を有する裁判所から本契約の違反および秘密情報の開示を禁止する差止命令を請求および取得する権利を有するものとする」について解説します。

 

まず、「したがって」は、thereforeやaccordinglyを使います。

 

主語である「情報開示者は」=the Disclosing Party

 

動詞は、「差止命令を請求および取得する権利を有するものとする」という「権利」を表しているので、mayまたはbe entitled toを使って書くことができます。

 

差止命令は、injunctionです。

 

よって、may (またはbe entitled to) seek and obtain an injunctionとなります。

 

このinjunctionを修飾する言葉として、「本契約の違反および秘密情報の開示を禁止する」という文言があります。

 

この条文で「~を禁止する」は、enjoinという単語が使われます。enjoyではないので注意してください。

 

よって、enjoining breach of this Agreement and disclosure of the Confidential Informationとなります。

 

さらに、差止命令を出すのは、「管轄権を有する裁判所から」です。

 

「管轄権を有する」は、competent jurisdictionと書きます。

 

よって、from any court of competent jurisdictionとなります。

 

後半部分をまとめると、以下のようになります。

 

Accordingly, the Disclosing Party may seek and obtain an injunction from any court of competent jurisdiction enjoining breach of this Agreement or disclosure of the Confidential Information.

 

 

前半部分と後半部分をまとめます。

 

The Receiving Party acknowledges that the unauthorized disclosure or use of the Confidential Information would cause irreparable damages for which monetary indemnity would not be an adequate remedy. Accordingly, the Disclosing Party may seek and obtain an injunction from any court of competent jurisdiction enjoining breach of this Agreement or disclosure of the Confidential Information.

 

 

穴埋め方式での練習

 

ちょっと長いですが、こちらも、穴埋め方式で練習してみましょう。

 

問題:

The Receiving Party [acknowledges] that the [unauthorized] disclosure or use of the Confidential Information [would] cause [irreparable] damages for which monetary indemnity would not be an adequate [remedy]. [Accordingly], the Disclosing Party may [seek] and obtain an [injunction] from any court of [competent] jurisdiction [enjoining] breach of this Agreement or disclosure of the Confidential Information.

 

訳:

情報受領者は、正当な権限に基づかない秘密情報の開示または使用は、情報開示者にとって、金銭的な賠償では十分に補うことができない回復困難な被害となることを認識する。したがって、情報開示者は、管轄権を有する裁判所から本契約の違反および秘密情報の開示を禁止する差止命令を請求および取得する権利を有するものとする

 

 

回答:

The Receiving Party [acknowledges] that the [unauthorized] disclosure or use of the Confidential Information [would] cause [irreparable] damages for which monetary indemnity would not be an adequate [remedy]. [Accordingly], the Disclosing Party may [seek] and obtain an [injunction] from any court of [competent] jurisdiction [enjoining] breach of this Agreement or disclosure of the Confidential Information.

英文の秘密保持契約の解説の目次

サクッと全体像をつかむ 秘密の保護と管理 保証・権利・返還
有効期間 「秘密の保持」 第三者への開示禁止
目的外使用の禁止 開示してよい範囲(その①) 開示してよい範囲(その②)
情報管理義務 差し止め請求 「現状渡し」と「無保証」
権利の留保 返還・破棄 定義条項

 

 

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