EPCコントラクターから見たプロジェクトファイナンス③ EPCコントラクターが注意するべき点

      2017/06/03

 

EPC契約の対価との関係

161103_%e3%83%97%e3%83%ad%e3%83%95%e3%82%a1%e3%82%a4%e2%91%a2

ハチ
前回使用したのと同じ図を使って説明するね。

会社Bと銀行との間で、プロジェクトファイナンスのための融資契約を締結する前に、EPCメーカーC社が会社Bとの間でEPC契約を締結したとするね。

そして、その契約締結と同時にEPC契約の効力が発生し、発電所建設の納期も起算され始めるとしたら、どうなると思う?

タマ
え?どうって・・・。

EPCメーカーC社は、EPC契約に従って、発電所を建設し始めないといけません。そして、納期に間に合うようにしなければなりません。

これって当たり前ですよね・・・?

ハチ
じゃあ、もしも、EPC契約締結後、何らかの理由で、会社Bが銀行との間でプロジェクトファイナンスに関する融資契約を締結できないことになったどうする?」
タマ
融資契約が締結できなくなったら・・・?
ハチ
そう。銀行は、最初は融資に乗り気だったとする。それを聞いてEPCメーカーC社も、「銀行がそういうなら間違いないだろう」と思っていた。そしてEPC契約を会社Bと締結した。そして材料の調達や設計を開始した。

すると、ある日突然、会社Bから、「銀行が融資してくれないことになった」と知らせを受けた。

この場合、そのプロジェクトはどうなるんだろう?

タマ
会社Bが資金を得られなくなったので、他から資金を調達できない限り、プロジェクトも終わると思いますが・・・
ハチ
じゃあ、それまでにEPCメーカーC社が行った仕事の対価はどうなるの?支払ってもらえる?
タマ
EPC契約上、おそらく、会社BはEPCメーカーC社に対して支払う義務があると思います。ただ・・・
ハチ
そう。「ただ・・・」、なんだよね
タマ
会社Bには、対価を支払うだけのお金がない・・・
ハチ
そうなるよね。会社Bの親会社である企業Aは?代わりに支払ってくれる?
タマ
企業Aは、EPCコントラクターC社とは何ら契約関係にありませんから、契約上の義務は負っていないですよね。法律上も負っていません。だから、EPCメーカーC社としては、企業Aにお願いベースでしか言えないと思います
ハチ
そうだよね。これってかなり大変な事態だよ。

EPCメーカーC社がどこまで仕事をしたかにもよるけれど、発電所建設案件という契約金額が莫大な案件で数カ月間でも作業をすると、作業の費用が何億、いや、何十億になっていてもおかしくない。それが回収できなくなるというのは、大変な損失となるよね

タマ
どうすればそうなるのを防ぐことができるのでしょうか・・・
ハチ
一つの方法は、会社Bと銀行間のプロジェクトファイナンスの融資契約が成立するまでは、少なくとも、EPC契約の納期の起算が開始しないようにEPC契約上で手当てすることだよ。具体的には、EPC契約の発効条件に、融資契約が締結されて有効になることを定めるとか
タマ
なるほど。そうすれば、融資契約が有効になるまで、EPCメーカーC社は作業を開始しなくて済むので、費用も生じないですね
ハチ
もしかすると、会社Bや企業Aは、「銀行がこの案件を進めると言っているんだから、時間はかかるけれど、最終的には融資してくれる。だから、そんな条件を付けずに、EPC契約を締結後すぐに履行を開始してほしい!」と言ってくるかもしれない。

でも、ここはEPCメーカーC社としては、譲るべきではないと思うよ。

した仕事の対価を得られないかもしれないというリスクは、メーカーが負ってよいリスクではないと思うな

タマ
なるほど~。

今ふと思ったんですが、企業Aから親会社保証を得ておく、という方法はいかがでしょうか?そうすれば、仮にプロジェクトファイナンスが付かないことになっても、EPCメーカーC社は対価をもらえなくなることは防げるのではないでしょうか?

ハチ
やっぱりそう思った?

でも、多分、親会社保証を出すように企業Aに申し入れても企業Aは断ってくるんじゃないかな~

タマ
え?どうしてですか?こちらの懸念を話せばわかってもらえるような気もしますが・・・
ハチ
企業Aがプロジェクトファイナンスを選択したということは、ノンリコースの融資を望んでいるということだと思うんだ。

ノンリコースにすることで、信用格付け上マイナスの評価を受けないようにしたい、という考えもおそらくあるよね。

そんな中、EPCメーカーに対して親会社保証を出したらどうなるだろう?

それって銀行に保証を出すこと、つまり、リコースの融資を受けることと実質的に同じことになってしまうよね?

せっかくプロジェクトファイナンスを選択した企業Aが、そんなことをあっさりと了解するとは思えないんだ・・・

タマ
なるほど~。

でも、プロジェクトファイナンスが付くまでの限定した期間であればどうでしょうか?

すぐに工程を開始してほしい。だけど、まだ銀行内の手続きでプロジェクトファイナンスがつかない。EPCメーカーC社はEPC契約の締結を渋っている。そんなときに、プロジェクトファイナンスの融資契約が締結されて有効になるまでの間だけ、企業Aは会社Bの支払い義務について親会社保証を出すのであれば、期間も限定されているし、信用格付けの評価への影響を最小化できるのではないでしょうか?

ハチ
その場合、もしも最終的にファイナンスがつかない、ということになった場合の扱いをどう企業AとEPCメーカーC社間で取り決めておくかが重要になるね。

でも、提案してみる価値はあるかもね。EPCメーカーC社としては、対価の支払いを受けられない事態に陥るリスクだけはゼロにしてきたいと考えていることが企業Aに十分伝わると思うし

タマ
対価を得られることを確保することは、そのくらい重要なことだということですね・・・
ハチ
対価を得るために仕事をしているわけだからね。ここは最低限の条件だと思うな~。

 

納期LDとの関係

ハチ
では、次はEPC契約における納期LDとプロジェクトファイナンスの関係について話をするよ
タマ
この2つは何も関係がなさそうな気がするのですが・・・?
ハチ
そう思うでしょ?でも関係あるんだよ。

まず、納期LDが何は知ってる?

タマ
はい。納期に遅れた場合の損害賠償額の予定のことですよね?つまり、納期に遅れた場合に遅れた当事者がいくらを賠償するのか予め契約当事者間で合意したものを指します。

損害賠償額の予定を英語ではliquidated damagesというので、この頭文字をとって、LDと言います

ハチ
大正解です!完璧だね。

では、EPCメーカーC社が納期に遅れた場合の納期LDは何を基準に決めておくべきだと思う?

タマ
え?それは、過去の同種の案件との比較とかでしょうか?
ハチ
それも一つの方法だね。でも、そもそも、EPCメーカーC社が納期に遅れると、会社Bには、現実にはどんな損害が生じると思う?
タマ
現実にですか?遅れたら・・・。う~ん、発電所の運転開始がそれだけ遅れるということだから・・・
ハチ
そうそう。運転開始が遅れると、それにつれて遅れてしまうものがあるよね?
タマ
電気を売るのが遅れる・・・
ハチ
そう!発電所が完成しない限り、運転なんてできない。運転ができないと、電気を作れない。電気を作れないと、電気を売ることができない。するとさらに何が遅れる?
タマ
電気を売って得たお金でプロジェクトファイナンスによって受けた融資の返済をすることになっているのだから・・・、返済ですか?遅れるのは返済ですよね!?
ハチ
その通り!では、返済が遅れるとどうなる?
タマ
遅延利息が生じます!ということは、納期が遅れることで、会社Bは銀行への返済が遅れて遅延利息を銀行に支払わなければならなくなりますね。これが納期遅延LDを決める基準になるんですね!
ハチ
そう。この建設期間中に生じる利息=建中利息=interest during constructionで、「IDC」ということもあるから覚えておいてね。

この建中利息の金額と比較した時に、オーナーから渡されたEPC契約のドラフト中の納期LDがあまりに高い金額で設定されていたら、EPCメーカーC社としては、「実際に生じ得る損害よりも高い」と言って、もっと下げるように交渉するべきだよ

タマ
なるほど~。納得できました!

 

それにしても、すごい仕組みですね。どこのどなたが最初に考えたのかわかりませんが、担保や保証が大してなくても、銀行として多額の資金を長期間融資できるような仕組みってすごいです。ちゃんと銀行が自分のリスクをとれるレベルの案件を対象とすることで対応でき、そして高い利息を得る。それでいて借主側もメリットを感じることができるなんて・・・

ハチ
リスクと利益のバランスのとり方とか、プロジェクトファイナンスに関わることがない人にとっても、こういう物の考え方それ自体が勉強になるよね。

プロジェクトファイナンスに興味を持てたなら、書店で専門書を買って読んでみるといいよ。発電所建設案件以外のどういった案件にプロジェクトファイナンスが使われているのか、その理由は何か、特徴は何か、注意点は何か、といった点を勉強すると、より理解が深まると思うよ

タマ
はい!読んでみます!ありがとうございました!!

 

EPCコントラクターから見たプロジェクトファイナンス

企業による資金調達の方法にはどんなものがあるのか?

発電所建設事例

 

 - EPCコントラクターから見たプロジェクトファイナンス