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はじめに~『歴史が教えてくれる働き方・生き方』~

 
  2020/01/23

はじめに~人が歴史から学ぶために必要なもの~

 

1人の少年が、人質としての生活を余儀なくされました。その生活は、実に10年以上にも及びました。

その間にその少年が、どのような気持ちで生きていたのかはよくわかっていません。しかし、おそらくは、幸せであったとはいえないでしょう。

彼は、後に大の読書好きになりますが、その人質としての生活の中だったでしょうか、ある1冊の本に出会いました。その本の中に登場する1人の人物の生き方は、彼を夢中にさせました。おそらく、その人物に大いに励まされたのでしょう。その人物について伝えられていたエピソードなどを、周りの人によく語ったと伝えられています。その歴史上の人物を、自分と重ねていたようです。

 

その少年は、早くして父を亡くしただけでなく、成人後には時の権力者の命令で、妻と息子の命をやむなく奪いました。さらに、自らの命を失う危機にも何度か遭遇しました。そうした犠牲のもと、晩年において、長らく続いた戦国時代に完全な終結をもたらし、日本史上稀に見る長期にわたる平和な時代の基礎を築きあげました。

 

その少年とは、徳川家康です。そして家康が愛読した本は、『吾妻鏡』という本です。この本は、徳川家康が生きていた時代より400年以上も前に、源頼朝によって成し遂げられた日本史上初の武家政権の樹立に関して書かれたものでした。

この頼朝の祖先は、武士の鑑としてあがめられている八幡太郎源義家です。つまり、頼朝は武家のスーパーエリートの血筋でした。

一方、家康は、そのようなエリートの出自ではありません。一説では、祖先は乞食坊主であり、その者が三河に流れついたのが始まりだったといわれています。そんな彼が、どうして、身の程もわきまえず、征夷大将軍・源頼朝と自分を重ね合わせたのでしょうか。

 

それは、家康から見たとき、少年時代の頼朝が、自分とよく似た境遇にあると感じられたからでしょう。頼朝は幼いころに父と兄弟を平氏との戦いで殺されました。頼朝は命だけは助けられますが、その後約20年にわたり、伊豆で流罪人として生きることを強いられたのです。頼朝はほとんど身一つで、かつ、犯罪者として扱われていました。

 

一方、家康は、人質とはいえ、三河の当主として家来をもっており、さらに、将来、人質先である今川家にとって役立つ武人となるように、今川家で様々な教育を受けることができていました。家康は、自分よりも不遇な境遇にあった頼朝が、それでも後に大いに出世したことを、『源平盛衰記』や『吾妻鏡』を読むことで知り、その結果、天下までをも意識したかどうかはともかく、「自分もこのように強くありたい」と考えたことでしょう。

 

私達の時代の前には、膨大な数の人間が生まれ、そして死んでいきました。その中で歴史に名を残したのはほんの一握りです。彼らは、正に英雄、正に偉人、それはつまり、「特別な人」であると考えられています。そのため、「偉人・英雄のエピソードなんて自分には関係ない」と思ってしまいがちです。

しかし、現代から見れば英雄と捉えられている人たちも、本質を見れば、私達が遭遇するのと似たような障害に直面していました。

 

例えば、上司にどうやって取り入ろうかと悩んでいた若者がいました。

例えば、自分のやりたいことを貫くべきか、それとも安定を求めるかで悩んでいた青年がいました。

例えば、正しい主張が通らず、どうしたものかと困っていた人がいました。

 

この点、家康は、将来自分が天下人になるなど思いもよらない境遇の中で、大胆にも、武家の頂点に立った源頼朝のことを「自分と同じだ!」と思い、彼の生き方や政治手法から貪欲に学ぼうとしました。そのことは、彼の人生にどれだけ光を与えたことでしょう。

 

本書では、様々な歴史上の人物が、私達社会人なら誰もが遭遇し得る状況と似た状況に追い込まれたときに、「それをどのように乗り越えたのか?」「そのことは私たちにどう生かせるのか?」という観点で50個の話にまとめたものです。社会人として会社で働かれている人なら、「正にあの時の自分と同じだ!」と思えるような状況を集めました。

本書を読み進めるために、細かな歴史の知識は不要です。年号の暗記も必要ありません。ただ1つ、読者の皆さんにお願いしたいのは、弱小国三河の当主に過ぎない家康が、下剋上とはいえ未だ血筋が尊重されていた時代の中にあって、武家の棟梁の正当な継承者である源頼朝を自分に重ね合わせたのと同じような、大胆な読み方をしていただきたいのです。どうか、この点に気恥ずかしさや抵抗を感じないで欲しいのです。きっと、そのような見方は、歴史上の人物以外の、例えば身の回りの誰かから何かを学び取る際にも、大いに役立つことでしょう。そうして、この本でご紹介するエピソードの中から、「みなさんにとっての吾妻鏡」となるものを見出していただけたなら、これまで何度も歴史に励まされてきた一人として、これ以上の喜びはありません。

上記は、2冊目の著書『歴史が教えてくれる働き方・生き方』の「はじめに」です。本書には、様々な時代と人物のエピソードが掲載されております。お求めの際は、できるだけ、通販ではなく、リアルの書店でご購入下さい!(その理由は、こちらに詳しく記載いたしました。ご確認ください)

なお、金額は、税込みで1650円です。

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