ボンドについて

      2019/11/22

ボンドについて

 

「ボンド」

 

EPC契約をまだ読んだことがない方、または、読んだことがあっても、さほど内容をしっかりと理解することができるところまでには至ってない方にとっては、あまり馴染みがない言葉なのではないでしょうか。

 

私が初めてボンドという言葉を聞いた時は、「何かと何かを繋ぐためのものなのかな?」と思いました。

 

そうです。当時の私には、接着剤を意味するボンドの意味しか思い浮かびませんでした。

 

しかし、EPC契約に出てくるボンドは、もちろんこの意味ではありませんでした。

 

ボンドとは、コントラクターの義務を保証するために、銀行からオーナーに対して発行される保証状のことです。

 

EPC契約によっては、このボンドを「bond」という表現で表すこともありますし、「letter of credit」、またはその略称としての「LC」という表現で出てくることもありますし、さらには、「security」という表現で出てくることもあります。ちなみに、ENAAでは、bondを、FIDICではsecurityという言葉を使っています。

 

ここでは、「ボンド」という言葉を使って説明していきたいと思います。

 

 

ボンドって何のためにあるの?

 

EPC契約では、ほぼ全ての契約で、オーナーはこのボンドをコントラクターに対して要求してきます。

 

コントラクターは、契約に定められている期限までに、このボンドをオーナーに渡すように義務付けられています。

 

このボンドは、コントラクターからその発行を依頼された銀行が発行します。

 


そのボンドには、簡単に言うと、次のようなことが書いてあります。

 

「私たち○○銀行は、このボンドに基づいて、あなた(オーナー様)が要求したら、すぐに、このボンドで保証する金額の範囲内で、要求された金額をあなたに対して支払います。」

 

つまり、「オーナーが銀行に、「払え」と言えば、すぐに銀行はオーナーに言われた金額を支払う」と言っているわけです。

 

オーナーは、このようなことが書かれたボンドを持っており、もしも契約に定められている義務にコントラクターが違反したと考えた場合には、そのボンドを銀行に持っていき、「コントラクターが契約に違反し、それによって私たちはこれこれの損害をいくら被ったので、その分を払って」と言いさえすれば、銀行は言われたとおりに払わなければならなくなるのです。

 

これを、on demandと言います。つまり、「要求されたらすぐに」という意味です。

 

重要なのは、このon demandボンドの下では、銀行は、オーナーが言っていることが本当かどうかを確認する必要はないという点です。

 

つまり、銀行は、「コントラクターは本当に契約に違反したのか?」「オーナーは本当にそれだけの損害を被ったのか?」といったことを一切調査する必要なく、「かしこまりました!」といって、言われた金額をオーナーに支払います。

 

そして、銀行が支払った金額は、コントラクターが銀行に対して支払わなければならなくなります。

 

どうしてこんな制度があるのかと言いますと、「コントラクターによる義務の履行を確実なものにするため」です。

 

EPC契約は、契約金額が非常に大きな案件が多いです。

 

そして、プラントが建設中の段階でも、前払金や中間払いとして、かなりの金額が対価としてオーナーからコントラクターに支払われます。

 

オーナーの立場からしてみると、このような場合に、コントラクターに途中で仕事を投げ出され、そして逃げられては大変です。

 

このようなon demandボンドがオーナーに差し入れられていれば、コントラクターは、そうそう契約違反をする、または仕事の途中で逃げるわけにはいかなくなりますよね。契約違反をすればすぐにお金を引き出されてしまうわけですから、「とにかく契約に忠実に履行しないといけない!」と、ボンドをオーナーに入れていない場合よりも、ずっと強く真剣に思うことでしょう。そうやって、オーナーは、コントラクターが契約違反や途中で逃げることを防止しようとしているのです。

 



 

ボンドの怖さ

 

このボンドの恐ろしさは、仮に、本当は、コントラクターが契約に違反していなくても、オーナーがボンドを銀行に示して、「払え」と言えば、銀行は払わざるを得なくなる、という点です。

 

このような場合は、銀行が一旦オーナーにその金額を支払った後で、コントラクターがオーナーに対して仲裁なり、裁判なりで「我々は契約に違反していません。よって、ボンドに基づいて銀行から支払われた金額を返してください」と主張して、取戻す必要があります(もちろん、コントラクターとオーナーが話し合って解決する場合もあるでしょう)。

 

このon demandを若干緩和する方法もあります。ただ、それはあくまで手続きとして若干の時間が稼ぎをできるといった程度です。それは追ってご説明いたします。

 

 

ボンドの種類

 

「ボンドとは一体どんなものか?」というのは、なんとなくわかっていただけたかと思いますが、実は、EPC契約においては、ボンドは、複数種類存在します。

 

以下に主なボンドを列挙します。

 

・入札保証ボンド

・前払金返還保証ボンド

・契約履行保証ボンド

・瑕疵担保保証ボンド

 

「こんなにいっぱいあるの!?」と思った方もいるかと思います。


 

あるんです。

 

保証するべき事項の数だけボンドがある、というイメージです。

 

ただ、EPC契約によっては、契約履行保証ボンドと瑕疵担保保証ボンドが一つにまとめられているものもあります。

 

次回からは、この4つのボンドについて、具体的に説明したいと思います。各ボンドを理解するポイントは、以下の通りです。

 

①    そのボンドは、何を保証するものなのか?

②    そのボンドは、いつ差し出されるのか?

③    そのボンドは、いつ返してもらえるのか

EPC契約のポイントの目次

Scope of Work ボンドのon demand性を緩和する方法 プラントの検収条件と効果
サイトに関する情報 コントラクターによる仕事の開始時期(納期の起算点)は? 危険の移転時期とその例外
オーナーの義務 仕事の遂行 債務不履行
契約金額の定め方と追加費用の扱い 設計(design)の条文について① 納期延長の場合のコントラクターの責任① 納期延長になる場合
追加費用の負担について 設計(design)の条文について② 納期延長の場合のコントラクターの責任② LD/リキダメ
ボンドについて 仕様変更① 仕様変更とは? 納期延長の場合のコントラクターの責任③ 納期LDの上限
入札保証ボンド 仕様変更② クレーム手続きと仕様書に書かれていない事項 納期延長の場合のコントラクターの責任④ sole and exclusive remedy
前払金返還保証ボンド 仕様変更③ 納期延長と追加費用の金額が合意に至らない場合の扱い 納期延長の場合のコントラクターの責任⑤ 中間マイルストーンLD
履行保証ボンド プラントの試験① 性能未達の場合のコントラクターの責任① 性能保証と性能確認試験
瑕疵担保保証ボンド プラントの試験② 性能未達の場合のコントラクターの責任② 最低性能保証・性能LD
責任制限条項① Limitation of Liability/LOL 不可抗力の扱い③ Force Majeureの効果を得るための手続き 私がEPC契約で真っ先に確認する点③
責任制限条項② 適用される場合と適用されない場合 不可抗力の扱い④ Force Majeureが長期間継続した場合 LOIの何がリスクなのか?
瑕疵担保責任① 総論 法令変更について LOIへの対処法(対外的)
瑕疵担保責任② オーナーの通知義務とコントラクターのアクセス権 契約解除① なぜ解除の理由によって解除の効果が異なるのか? LOIへの対処法(社内的)
瑕疵担保責任③ 保証期間の延長 契約解除② オーナーの義務違反に基づくコントラクターによる契約解除 EPC契約における支払い条件
瑕疵担保責任④ Disclaim(免責)条項 契約解除③ オーナーの自己都合解除
作業中断権① 中断権の存在意義 契約解除④ コントラクターの債務不履行に基づくオーナーによる契約解除
作業中断権② 中断権行使の効果 契約解除⑤ 不可抗力事由が長期間継続した場合
不可抗力の扱い① Force Majeureとは何か? 私がEPC契約で真っ先に確認する点①
不可抗力の扱い② Force Majeureの効果 私がEPC契約で真っ先に確認する点②

 

【私が勉強した原書(英語)の解説書】

残念ながら、EPC/建設契約についての日本語のよい解説書は出版されておりません。本当に勉強しようと思ったら、原書に頼るしかないのが現状です。

原書で勉強するのは大変だと思われるかもしれませんが、契約に関する知識だけでなく、英語の勉強にもなりますし、また、留学しなくても、英米法系の契約の考え方も自然と身につくという利点がありますので、取り組んでみる価値はあると思います。

EPC/建設契約の解説書 EPC/建設契約の解説書 納期延長・追加費用などのクレームレターの書き方
法学部出身ではない人に向けて、なるべく難解な単語を使わずに解説しようとしている本で、わかりやすいです。原書を初めて読む人はこの本からなら入りやすいと思います。 比較的高度な内容です。契約の専門家向けだと思います。使われている英単語も、左のものより難解なものが多いです。しかし、その分、内容は左の本よりも充実しています。左の本を読みこなした後で取り組んでみてはいかがでしょうか。 具体例(オーナーが仕様変更を求めるケース)を用いて、どのようにレターを書くべきか、どのような点に注意するべきかを学ぶことができます。実際にクレームレターを書くようになる前に、一度目を通しておくと、実務に入りやすくなると思います。
納期延長・追加費用のクレームを行うためのDelay Analysisについて解説書 海外(主に米国と英国)の建設契約に関する紛争案件における裁判例の解説書 英国におけるDelay Analysisに関する指針
クリティカル・パス、フロート、同時遅延の扱いに加え、複数のDelay Analysisの手法について例を用いて解説しています。 実例が200件掲載されています。実務でどのような判断が下されているのかがわかるので、勉強になります。 法律ではありません。英国で指針とされているものの解説です。この指針の内容は、様々な解説書で引用されていますので、一定の影響力をこの業界に及ぼしていると思われます。
Society of Construction Law Delay and Disruption Protocol

2nd edition February 2017

 - EPC契約のポイント