EPCコントラクターから見たプロジェクトファイナンス② 発電所建設事例

      2017/06/03

 

ハチ
では、次のような場面を考えてみよう。

海外のある国に、火力発電所を建設し、その発電所を運転して電気を売ることで一儲けしたい!と考えている企業Aがあったとする。

この企業Aが火力発電所を所有して運転するための会社Bを設立した。つまり、会社Bは企業Aの子会社というわけだ。
そして、この会社Bは、火力発電所を建設することができるEPCメーカーC社との間でEPC契約を締結したと仮定しよう。EPCメーカーC社がEPC契約に従って火力発電所を建設して会社Bに納入すれば、会社Bはその火力発電所を運転することができる。
そして運転から得られた電気を売れば、電気料金を得ることができる。
会社Bの親会社である企業Aは、会社Bが得た電気料金を配当という形で得ることができて、当初の目標達成!というわけだ。これを図にすると、下のようになるよ

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ハチ
ここで、会社Bは、EPCメーカーC社に対して、火力発電所建設の対価、つまり、EPC契約の対価を支払う必要があるよね。この対価分を、銀行からの「プロジェクトファイナンス」で賄うことにする
タマ
!!!ここで遂に「プロジェクトファイナンス」が出ましたか!

確かに、今私が関わっている案件はこのようなスキームです。ちょうど、上の図のEPCメーカーC社の位置にうちの会社が当たります。

会社Bが銀行から融資を受けてEPCメーカーC社に払った分を、会社Bはどうやって銀行に返すのですか

ハチ
無事に火力発電所が建設され、運転が開始されると、会社Bは電気を売ることができるようになる。それで得た電気料金で、銀行に対して返済するんだよ
タマ
なるほど~。電気料金から返済するんですね。あっ!もしかして、「発電所建設プロジェクト」から得たお金で返済するから、「プロジェクトファイナンス」っていうんですか?
ハチ
う~ん、「プロジェクトファイナンス」の「プロジェクト」が、ある特定のプロジェクトを遂行するための融資である、という理由からきているのか、それとも、融資された金額を返済する資金がプロジェクトの運営の結果から得られたお金だからなのか、それともその両方なのかは僕もよくわからないんだ。

ただ一つ言えるのは、「ある特定のプロジェクトを遂行するための融資である点やそのプロジェクトの運営から得られたお金で返済するという点がプロジェクトファイナンスの決定的な特徴ではない」ということだ。

例えば、企業Aが銀行に対して保証を提供する融資でも、ある特定のプロジェクトを遂行するための融資やそのプロジェクトの運営から得たお金で返済するという融資はあるわけだ。だから、プロジェクトファイナンスの最大の特徴はあくまで、「保証を出さずに(または限定的な保証で)融資を受ける」点にある、ということに注意してね

タマ
そこが分からないんです。

どうして銀行は、保証を取らずに、または限定的な保証しかとらずに、会社Bに対して融資をすることができるんですか?会社Bなんて、大した資産を持っているわけでもないんですよね?

もしもEPCメーカーC社によって火力発電所の建設がうまくいかなかったら、銀行は貸したお金を返してもらえなくなるんじゃないですか?

ハチ
その通りだね。だから、銀行は、なんでもかんでもプロジェクトファイナンスで融資をしてくれるわけではないんだよ。例に挙げた火力発電所案件のように、無事に完成する見込みが高いと判断した案件の場合にだけ、プロジェクトファイナンスでの融資をするんだよ
タマ
え!そうなんですか!?プロジェクトファイナンスがなされる案件の種類って決まってるんですか!?
ハチ
完全にではないけれど、ある程度決まっているといえると思うよ。資源開発案件、発電所案件、その他LNGや石油精製プラント案件とかが多いみたいだね。

銀行にとって最大の関心事は、なんといっても確実に返済してもらうことなんだ。返済してもらうためには、プロジェクトそのものが成功しないといけないよね。だから、保証なし、または限定的な保証で融資をするには、「失敗しないだろう」と思えるプロジェクトの場合に絞る、というようにしているんだよ。

そして、プロジェクトファイナンスの融資をすると決める前には、そのプロジェクトが確実に成功するかどうかを銀行は十分に検討・確認をするんだ。

実績のあるEPCメーカーが建設するのか?とか、タービンメーカーやボイラーメーカーはどこなのか?そして、会社BとEPCメーカーC社間で締結されるEPC契約の中身もチェックするんだよ。

さらに、発電所建設プロジェクトの場合、「買電契約が締結されている」という点がプロジェクトファイナンスを受けられるかどうかにおいてとても重要な点なんだよ

タマ
買電契約?
ハチ
そう。プロジェクトファイナンスが数多く使われる発展途上国での火力発電所建設案件では、発電された電気を下の図の会社Bから直接買うのは、一般消費者ではなく、その国の電力庁であることが多いんだ。その電力庁と会社Bとの間で、電気の売買契約、つまり買電契約を締結する。この買電契約には、電気料金が定められている。

 

そのため、ある一定の電気を発電することができれば、会社Bはその契約書に定められている金額を電力庁から得ることができるんだよ。これなら、銀行からしてみると、将来の返済を受けられるかどうかの目処が立てやすいよね。この買電契約があることが、発電所建設案件でプロジェクトファイナンスを使用できるかどうかの判断ではとても重要になるんだよ

タマ
なるほど~。そうやって銀行は、発電所が無事建設され、かつ、建設後は買電契約に従って利益が得られる、と判断した場合に、プロジェクトファイナンスによる融資をすることを決定するんですね~。

 

銀行にとってのメリット

タマ
でも・・・
ハチ
「でも」?・・・何か疑問が?
タマ
リスクはそうやって取れるとしても、プロジェクトファイナンスには、銀行にとって、一体どんなメリットがあるんですか?

確かにリスクを抑えられるといっても、ゼロにはならないですよね。普通に会社Bの親会社である企業Aから返済についての保証をもらったほうが、リスクがなくて、銀行にとってはより安全だと思うのですが・・・

ハチ
いい質問だね~。プロジェクトファイナンスによる融資によって、銀行には大きなメリットがあるんだよ
タマ
え!なんですか?それ!?
ハチ
いくつかあるんだけど、一番のメリットは、通常の融資の場合よりも、利息を高く設定することができるんだよ。借主である会社Bやその親会社である企業Aにとっても、保証を出さない融資なんだから、その分利息が高くてもしょうがないか、と思えるよね
タマ
なるほど!リスクを引き受ける代わりに利益を得るわけですね!

 

借り手のメリット

タマ
あれ?でも・・・
ハチ
また何か疑問が?
タマ
今度は逆に、どうして会社Bや企業Aは、プロジェクトファイナンスを選ぶメリットがあるんでしょう?普通に企業Aが銀行に対して返済を保証すれば、利息は抑えられるわけですよね?

それに、プロジェクトファイナンスでの融資が許されるような案件は、銀行が「成功する可能性がかなり高い」と考えるような案件なのですから、企業Aが銀行に保証を出して普通の融資を受けることにしたほうが、企業Aは電気料金から返済に回す金額がその分減り、結果としてより多くの配当を会社Bから受けることができて、より良いのではないでしょうか?

ハチ
素晴らしい質問です!いいところに気が付いたね~。さすが!

実はね、企業Aにとって、プロジェクトファイナンスを選んだ方が、「より多くの金額」を、「より長期間」で借りられる、というメリットがあるんだよ

タマ
そうなんですか!?
ハチ
発電所の建設って、莫大な金額がかかるんだよ。火力発電所の場合、1000億円を超えることもある。また、発電所の建設それ自体に2~3年はかかるし、その後に発電所を運転して、そこから電気料金を得てある程度の利益を得るのにもまた数年かかるんだ。

火力発電所のプロジェクトファイナンスでは、返済期間が10年を超えるということもよくあるんだよ。普通の融資で10年を超えるようなものはそうそうなくて、こんなに長期間の融資は、プロジェクトファイナンスならではなんだよ

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タマ
なるほど~。大規模な案件には、普通の融資を受けるよりも、プロジェクトファイナンスを受ける方がよい面があるんですね~
ハチ
それだけじゃなく、企業Aは、銀行に対して返済義務を負わない、あるいは制限された返済義務しか負わないとすることで、自社の信用格付けが下がるのを避けることができるんだよ
タマ
信用格付け?
ハチ
そう。企業Aがプロジェクトファイナンスを選ばずに普通の融資を受けて銀行に対して会社Bの返済義務について保証を出すことになると、信用格付けの評価においてマイナスになるよね。

なぜなら、将来、もしもそのプロジェクトが失敗したら、企業Aは返済義務を果たさないといけなくなるんだから。

企業Aの信用格付けが低くなると、他の案件のために銀行から融資を受ける際に、断られたり、利子が高く設定されたりといったことにもなりえるんだ

タマ
となると、プロジェクトファイナンスは、銀行からしてみると、確かに一定レベルのリスクを負うものの、それは成功の可能性が高い案件を対象とすることで抑えることができ、かつ、より高い金利を得ることができるというメリットがある。

一方、企業Aからしてみると、より多額の、かつ長期の金額の融資を受けることができ、それが保証無し、あるいは限定的な保証で足りるため、自社の信用格付けの評価上もマイナスの評価とならないというメリットがある、ということですね。

まさにwin-winの関係という感じがしますね!

ハチ
その通りだよね。すごい仕組みだよね
タマ
はい。こうしてみると、ものすごく理にかなったファイナンスであるように思えてきました
ハチ
では、ここでプロジェクトファイナンスの定義を確認しておこう。この定義は色々あるけど、簡潔なものを挙げておくね

「プロジェクトファイナンスとは、企業があるプロジェクトにおける資金調達を行う際に、プロジェクト自体から生じる収益や事業の持つ資産を返済原資とし、事業を行う企業やスポンサーが銀行への債務保証をしない、あるいは債務保証が限定されている資金調達の方法」

 

EPCコントラクターとの関係

タマ
プロジェクトファイナンスの仕組みについて大分理解できた気がします。ただ・・・
ハチ
え?何?また疑問が?
タマ
EPCメーカーにとってみると、そのEPC案件がプロジェクトファイナンスであるかどうかで何か違ってくるのでしょうか?
ハチ
おっ!またまたいい視点だね~
タマ
だって、EPCメーカーも発電所建設プロジェクトで重要な役割を担っているわけですから、何か影響があるのかなと・・・
ハチ
EPCメーカーにとって、特段有利になるとか、不利になるとか言ったことはないと思うし、必ずしもプロジェクトファイナンス特有の問題というわけでもないけれど、一応注意したい点が2つあると僕は思っているよ。

一つは、EPC契約の発効条件に関して、もう一つは、納期遅延LDに関してだよ

タマ
EPC契約の発効条件と納期遅延LD・・・ですか?
ハチ
そうだよ。それも具体的な事例で考えてみようか。でもその前に、ここまでのおさらいをしておこう。

・プロジェクトファイナンスの特徴
返済の保証をしないノン・リコースまたはそれが限定的なリミテッド・リコースの融資であること。
返済原資はプロジェクト遂行によって得られる収益やプロジェクトが保有する資産であること

・貸主である銀行のメリット
通常の融資よりも金利を高く設定できる

・借主のメリット
通常の融資よりも多額の資金を長期間にわたって借りることができる
信用格付けの評価の際に、債務保証をしていると評価されない

ハチ
最後に、使われる言葉についてですが、これまで説明してきた企業Aは、「事業会社」とか「スポンサー」、また、会社Bは、「特別目的会社(Special Purpose Company)」の略で「SPC」、融資してくれる銀行等の金融機関は「レンダー」と呼ばれています。さらに、買電契約のような、プロジェクトによって生じるものを長期間に渡って買い取る契約は、「オフテイク契約」と一般に呼ばれています。下の図でそのあたりも確認してね。

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企業による資金調達の方法にはどんなものがあるのか?

EPCコントラクターが注意するべき点

 

 

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